研究概要 |
社会科学における実験研究は,ここ10年の間に急激な勢いで増加している.急速に変化する社会情勢を反映するためには,従来の理論のみによる予測や制度設計では不十分で,実際の人間を用いた実験結果に対する要請が高まっている.ただ,実験研究が進めば進むほど,理論と実験結果の乖離が顕著になり,新たな緊張関係が生まれ,単に理論における細部を変更するのみでは対処しきれない現実に直面している.対処しきれない背景には,社会科学の各分野で人間行動を十分に吟味していない点がある.たとえば,経済学においては,暗黙のうちに「合理的個人」を想定はするものの,その妥当性を問うという研究は未開拓の領域である.そのため,本研究における柱の一つとして社会科学における人間行動の基礎となる人間性の研究を目指す.これが本研究における文化班(社会行動の文化・制度的基盤),集団班(集団行動と社会規範),意思決定班(意思決定のマイクロ過程分析)である.これらの研究と共に,政治制度,経済制度,経営組織および制度をささえる社会関係資本の分析をするのがそれぞれ政治班,市場班,組織班,社会班である. 総括班の目的は,全体の研究計画の立案,各班の研究活動のコーディネーション,シンポジウム・ワークショップの開催,ニュースレターの発行,ホームページによる情報発信,教育・研究活動を支援するためのサマースクールの開催,新たに実験研究を始める研究者を支援するための公募研究の支援などである.
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