研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
19H05714
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 隆史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70214377)
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研究分担者 |
田中 賢 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (00322850)
鷲津 仁志 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 教授 (00394883)
田中 求 京都大学, 高等研究院, 特任教授 (00706814)
辻 勇人 神奈川大学, 理学部, 教授 (20346050)
高島 義徳 大阪大学, 理学研究科, 教授 (40379277)
原田 慈久 東京大学, 物性研究所, 教授 (70333317)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 水圏機能材料 |
研究実績の概要 |
本領域の目的達成のために領域の統括を行った。行事の企画・運営や成果の発信、計画研究および公募研究の各研究者の協力・共同研究体制の構築と拡大を推進した。 令和2年6月に第1回領域会議(オンライン)、令和2年10月に第2回領域会議(オンライン)を開催した。令和2年11月に第2回若手スクール(オンライン)を実施し、水圏機能材料研究に関わる若手研究者の育成を進めた。令和3年2月に、第1回産学連携フォーラム(オンライン)を開催し、企業研究者へ成果公開し、交流を行った。 新型コロナウイルス感染症の影響が続いたため、いくつかの予定を令和3年度以降に延期した。日本化学会秋季事業第11回および第12回CSJ化学フェスタ内の企画として公開シンポジウムを開催した(令和3年10月(オンライン)、令和4年10月(東京・船堀))。水圏アカデミアインターンシップを実施し、本領域の若手研究者に対して分子シミュレーションの実習を行った(第1回(オンライン):令和3年9月から10月まで、第2回(神戸・兵庫県立大、オンライン):令和4年12月から令和5年1月まで)。令和5年2月に第2回インダストリアルインターンシップをJ-PARCにおいて開催した。 ホームページやニュースレターによって、領域での研究成果について社会に広く発信した。一般化学誌「現代化学」(2022年12~2023年3月号)に水圏機能材料研究の内容を掲載し、一般社会への発信と普及を推進した。 水圏機能材料の解析に共通性の高い重水素化試薬を一括購入し、各研究者に配布し、材料と水の相互作用の解析を促進させた。また、材料に含まれる水の熱特性を調べるため、示差走査熱量測定装置(DSC)を購入して大阪大学に設置し、領域研究における共通設備として利用ができる体制を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1回および第2回領域会議の開催により、各研究者の交流が進み、多くの共同研究へと発展した。特に、先端計測・シミュレーションを専門とするA02の研究者がハブとなる共同研究が数多く立ち上がった。 令和3年度にオンラインで開催された日本化学会第11回CSJ化学フェスタ内の公開シンポジウムでは、令和2年度を大幅に上回る250名近い聴講者が来場した。続く令和4年度の同公開シンポジウムは初めて対面の開催が可能となり、多くの聴講者が来場し、活発な議論を行った。ニュースレター、「現代化学」誌での研究紹介掲載、ホームページでの情報発信により、国内外に向けて「水圏機能材料」をさらに周知した。令和2年度の第2回若手スクール、令和3・4年度の水圏アカデミアインターンシップ、令和4年度のインダストリアルインターンシップには公募研究からも多くの若手研究者(大学院生・博士研究員含む)が参加した。そのほとんどがオンライン開催となったが、材料と先端計測に関する講義や、シミュレーション実習、中性子散乱解析実習を通して次世代の水圏機能材料研究を担う若手研究者の育成を進めた。また、若手スクールではポスター発表により、異分野交流を活発に進めた。令和3年2月にオンラインで開催した第1回産学連携フォーラムには、400名の参加者が来場した。4名の企業の研究者からの講演と領域研究者による研究紹介を行い、産学共同研究の基盤を構築した。 重水素化試薬の一括購入と配布により、研究者間での分析条件の共通化が可能になり、材料と水の相互作用の総合的な解析とその理解のための体制構築を推進できた。また共通機器としてのDSC設置により、どの研究者も容易に水を含む材料の熱特性解析ができるようになった。 以上により、当初の計画に対して新型コロナ感染症の影響で繰り越す行事も生じたが、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度が本領域の最終年度であるため、様々な水圏機能材料研究の取りまとめを行う。5年の研究成果のまとめの報告の場として、令和5年10月に日本化学会秋季事業 CSJ化学フェスタ内での企画の公開シンポジウムを開催予定である。また、第7回領域会議の開催も予定しており、公募研究を含めた進行中の共同研究が仕上げられるようにサポート・マネージメントを行う。新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和に伴い、対面でのイベントを基本としながら、一方でこれまでの経験の蓄積を駆使して、様々なオンラインツールを活用し、遠隔地の研究者との交流や共同研究の活性化、および若手研究者育成を推進する。 特に、次世代の水圏機能材料研究を担う若手研究者の育成は本領域の終了とは一線を画し、今後のわが国の材料研究への先行投資として重要である。このため、SPring-8やJ-PARCなどの大型施設の見学等を盛り込んだ若手スクールやインダストリアルインターンシップなどは、令和5年度は対面型の行事としての実施を予定する。 国際ワークショップなどの海外研究者との交流行事については、国際アドバイザリーボードと調整し、新型コロナウイルス感染症の状況を見ながら実施を検討していく。 重水素化試薬の一括購入と配布、DSC等の共通機器設置による水と材料の相互作用の解析について、領域として統一的な方向性を持って進められることが示された。この体制は引き続き継続し、本領域の共通的な課題である「水の基礎学理構築」および「水と物質の構造・機能相関」の理解を共通化・総合化させることを促進する。
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