ATP(アデノシン三リン酸)は生命系のエネルギーの供給と需要の媒体であるが、その有効性の真の理解、すなわち、化学-力学エネルギー変換の分子論は未確立である。本領域は、物質科学と生命科学の両方にまたがる根本課題に取り組む。生命系存続の環境母体である「水」を主役とし、構造論・機能論に立脚した新しいエネルギー論の分子的基盤構築を目指し、既存の概念にとらわれない学際的研究領域を新たに開拓する。このためには、異なる分野の「融合」による新たな方法論の展開と次世代育成が不可欠である。計画研究のほかに幅広い分野からのユニークな公募研究を糾合して、理論的研究と実験的研究とを緊密に組織化して推進している。 基本的な研究戦略:第1に実験と理論でATP等低分子の化学反応前後の物質の水和自由エネルギーを正確に求める。その計算に必要な新たな手法の開発も含む。第2にヌクレオチドと種々のタンパク質の結合の自由エネルギーの内部構成を実験と理論両面から調べる。第3にヌクレオチド加水分解酵素の機能について、水和を含めたエネルギー論の観点で実施する研究を行う。
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