現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本領域の発足により、異なる研究グループ間の共同研究に成果が出ている。例えば、B06計画研究「CMB」研究代表者小松英一郎らは、宇宙背景放射(CMB)のPlanck衛星の偏光データを解析する新たな手法を開発し、宇宙のパリティ対称性を破る物理の兆候を99.2%の信頼性で検出した。この結果は、初期宇宙の物理を大きく進展させる重要な発見で、その後業界に活発な議論を巻き起こしている。 また、A01計画研究「軽いダークマター」らが、上記のCMBのパリティ対称性の破れの測定結果は、初期宇宙の超軽量アクシオン粒子がダークマターと相互作用する宇宙模型により自然に説明できることを指摘し、Physical Review Lettersに掲載された(Nakagawa, Takahashi & Yamada, Phys. Rev. Lett. 127, 181103, 2021)。更に、領域の若手研究員小幡一平氏は、CMBパリティ対称性の破れの結果と、B01計画研究「レーザー干渉計」が進めるダークマター候補のアクシオン探査実験、つまり全く異なる観測・実験を同時に説明できる、現代宇宙論の二つの大問題であるダークエネルギー、ダークマターを説明する2つのアクシオンの宇宙模型を提唱した (Obata, arXiv:2108.02150)。この成果は、領域の異なる研究を結ぶ、また若手研究者単著の見事な研究成果である。その他にも、領域代表者村山がアクシオン宇宙模型を詳細に調べる研究(Dror, Murayama & Rodd, Phys. Rev. D 103, 115004, 2021)を発表するなど、発足以来、アクシオンダークマターの研究について新たな展開が実現している。発足から約1.5年の間に領域から100編以上の査読論文が発表されており、ダークマターに関する各項目の研究は順調に進んでいると言える。
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