研究領域 | ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究 |
研究課題/領域番号 |
20H05850
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村山 斉 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (20222341)
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研究分担者 |
高田 昌広 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (40374889)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | ダークマター |
研究実績の概要 |
宇宙の物質の大部分を占めるダークマターの正体を解明するために、今までにない多角的な方法で理論から宇宙観測・地上実験にまたがる研究領域を拓き、その正体に迫る。具体的には、サイエンスの柱とし「軽いダークマター」「重いダークマター」「巨視的ダークマター」を立て、約90桁の範囲にも及ぶ広い質量範囲のダークマター候補を網羅的に調べる。 3年目の令和4年度は、前期公募研究の最終年度にあたり、各計画研究との交流の中から理論と実験、理論と天文などの分野融合型の論文6件を含む20件以上の論文が発表された。このなかには、若手がリードした論文も含まれており世代を超える研究領域の重層化が図られていると言える。 中間地点であった本年度は、計画研究調書に記載の通り、総括班及び全計画研究メンバー、前期公募研究代表者19名に加え、分野をリードする世界的に著名な若手招待講演者6名を含めた中間成果国際シンポジウムを開催した。欧州、米国、インドからの外国人オンライン参加を含めた約130名が参加する活況なシンポジウムとなった。特筆すべきは大学院生を含めた若手の積極的な発表が多く見られたことである。これは、これまで領域内の若手研究者の海外2機関を含めたfaculty positionへの順調なキャリアパス9名の実績と無縁ではないと考える。本年度も若手が積極的に発表・活躍出来る機会の支援を続ける。 また、同シンポジウム開催期間中に、領域評価者参加の対面を主とした総括班会議を開催し、領域研究期間後期に向けて、領域運営の貴重な中間点検評価・助言を得て、本領域が最大限の成果を達成出来るよう、計画研究及び来年度加わる新たな公募研究の間を調整し、最終年度への成果の取りまとめに向かう準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年3月7日-9日開催の中間成果国際シンポジウムでは、計画研究分野をリードする世界的に著名な若手6名の最先端の招待講演を含め、過去3年間の計画研究班の成果を中心に、最終年度を迎えた加速器実験、アクシオン探査実験、重力波レーザー干渉計を想定した理論研究、可視光・X線・ガンマ線等の多波長データを想定した開発・観測・理論研究、宇宙の構造形成に関するシミュレーションなど多彩な公募研究代表者19名の成果発表が行われた。 本領域から出た特筆すべき研究成果としては、1) 宇宙背景放射Planckの偏光データからパリティ対称性を破る兆候の発見の研究。これはダークマター、あるいはダークエネルギーの候補であるアクシオンが関与している可能性があり、大発見に繋がる可能性がある。2) 重力波干渉計の技術・実験を応用した、バリオン・レプトン対称性を破る軽量ベクトル型ダークマターあるいはアクシオン探査の実験的研究の進展。3)すばるHyper Suprime-Cam (HSC)の天文データから高エネルギー宇宙線の検出手法の開発、統計的研究の推進。4)スカラー場軽量ダークマター、アクシオンの探査を目的としたすばるPrime Focus Spectrographの開発研究の進展、理論研究の整備。5)すばるHSCデータの重力レンズ精密測定から宇宙ダークマター総量の測定、宇宙標準理論の検証の研究の進展。6)ダークマターの理論的研究、特に素粒子論、弦理論、宇宙論の融合的研究を含む、ダークマター模型の理論的研究の進展、など様々なダークマター候補および多角的な研究の進展があった。 当該シンポジウムを通して、宇宙の物質の大部分を占めるダークマターの正体を解明するための多角的な研究が順調に進展していることを、領域研究全体のみならず分野のコミュニティとも共有ができ、領域研究後期に向け順調な領域運営がされていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
宇宙の物質の大部分を占めるダークマターの正体を徹底的に解明するために、サイエンスの柱とし「軽いダークマター」「重いダークマター」「巨視的ダークマター」を立て、約90桁の範囲にも及ぶ広い質量範囲のダークマター候補を網羅的に調べる戦略をとっている。このサイエンステーマを調べるために、研究項目として「理論班」(A01-A03)、「地上実験・宇宙観測班」(B01-B06)、「究極班」(C01-C02)の計画研究を組織している。これに加え来年度は新たに採択される後期公募研究課題が領域に組み込まれる。前期に引き続き相補的に領域全体に研究課題の重層化を目指す。 総括班は、領域全体の進展をモニターし、研究方針の策定にあたり、本領域が最大の成果を達成するよう計画研究および公募研究の間を調整し、領域を総括する。そのために、定期的な戦略ミーティング(オンライン会議、チームコミュニケーションツール、メール審議など)の場を密に持ち、領域全体および各計画研究の進捗状況を把握し、問題点の共有を促し、より有効な研究方法を領域内全体で検討する。 4年目の来年度は領域研究期間後期に入り、再来年度の最終年度に向け、理論・実験観測・究極班の各計画研究領域と新たな公募研究課題を一層有機的に展開出来るようコミュニケーションの機会を設けていく。コロナ終息後活発化している海外の関連研究プロジェクトとの交流で、最新の知見を積極的に共同研究に取り入れ、領域内研究者、特に若手研究者のキャリアアップの機会も引き続き確保する運営を心掛ける。
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備考 |
総括班は、本来、領域を統括する立場にあるが、領域代表の村山斉はどの計画班にも所属していないため、村山の研究実績にあたる論文と研究発表を含めて報告をする。
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