研究領域 | 地殻流体: その実態と沈み込み変動への役割 |
研究課題/領域番号 |
21109001
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高橋 栄一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (40144779)
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研究分担者 |
松澤 暢 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20190449)
小川 康雄 東京工業大学, 火山流体研究センター, 教授 (10334525)
小木曽 哲 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (60359172)
中村 美千彦 東北大学, 理学系研究科(研究院), 准教授 (70260528)
岩森 光 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (80221795)
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キーワード | 地殻流体 / 沈み込み変動 / 地震 / 火山 / 地殻変動 / 塩水 / 電気伝導度 / 弾性波速度 |
研究概要 |
地殻流体は、地震活動・火山活動・地殻変動の背後にあってそれらの発生メカニズム、分布、活動様式に広汎な影響を与えている可能性が近年指摘されている。我々は本新学術領域研究で最精鋭の研究チームを組織し、複数のプレートがせめぎ合う『地球上で最も激しい変動帯に位置する日本列島をテストフィールド』として、地震波・電磁気MT共同観測を実施している。総括班は研究の全体を活発に推進するため、融合研究センターに特任助教2名を雇用し、国内外の研究者との融合研究の推進に努めている。 第1回の国際シンポジウム「Geofluid-1」を2011年3月17-20日東工大で開催する準備を進めていたが、大震災により中止、講演要旨を参加予定者全員に郵送して「書面開催」とした。平成23年度は地球惑星科学連合大会(2011年5月22-27日幕張メッセ参加者約3000人)において本学術領域は特別セッション「流体と沈み込み帯のダイナミクス」(コンビーナー:川本竜彦・岡本敦・松澤暢)を主催した。特別セッションは5月25日に開催され、口頭講演24件、ポスター発表20件の発表があり活発な討議が行われた。さらに、2011年9月17日-22日に岩手県花巻にて「地殻流体研究会・サマースクール」を開催した。大震災の余波もある中、あえて東北復興を支援する意味から岩手県で研究会を開催し、ほぼ全メンバーにあたる研究者60名、学部生・大学院生30名の参加を得た。 地震により繰り越した総括班経費200万円を用いて、岡山大学地球物質科学研究センター(センター長:神崎正美ほか本領域のメンバー4人が在籍)と共同開催で、国際シンポジウム[Misasa-2012&Geofluid-2:Dynamics and Evolution of the Earth's Interior: special emphasis on the role of fluids]を鳥取県三朝町文化ホールなどを会場に2012年3月18-21日に開催した。この国際会議には外国人30名を含む150人の参加者があり、大震災をきっかけに明らかになった新たな観察事実を含め、日本列島ダイナミクスに地殻流体がどのような役割を果たしているかについて活発な国際共同研究のスタートとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年秋に行われた中間評価において、評価結果:A(研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる)を得た。また、「総括班主導のもと、3つの融合研究が推進され、その成果としてGeofluid Mapが作成されつつあることは、今後に大きな期待が持てる。地震波によるトモグラフィー手法と電磁気的手法を同じ地域に用い、連携して地殻の流体的振舞を調べているなど、共同研究が広がっていると認められる。また、深部の地殻流体は有馬型塩水であることや、塩水が鉱物界面の結合力を低下させることが明らかになったのは興味深い成果である。」との有益なコメントも受けている。
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今後の研究の推進方策 |
計画研究5件のうち2件の代表が東北大学に在籍していることから、平成23年度は受難の年であった。しかしながら、地震活動が活発化した日本列島は(もともと本領域で計画していた研究を進めるばかりでなく)地震・地殻変動・火山活動に果たす「地殻流体」の役割を解明する絶好の好機ととらえることができる。本領域では、大震災を受けて、以下の項目を新たに加えて研究を実施することとした。(1)東北地方太平洋沖地震(M9.0)発生後の、プレート境界・スラブ内・内陸の地震活動・応力場の変化や詳細な構造推定に基づき、地震発生に果たす地殻流体の役割を定量的に調べる(AO1-1)。(2)いわき市周辺の地震発生地域での広帯域MT観測を実施する(AO1-2)。(3)スラブ上面における地震発生過程に対する水の効果に注目した岩石摩擦実験を行う(AO2-2)。
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