研究分担者 |
石黒 浩 大阪大学, 工学系研究科, 教授 (10232282)
大島 純 静岡大学, 情報学部, 教授 (70281722)
萩田 紀博 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 知能ロボティクス研究所, 所長 (40395158)
前田 英作 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション・科学基礎研究所, 人間情報研究部, 部長 (90396143)
板倉 昭二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50211735)
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研究概要 |
研究用プラットフォームの改良を進めた.これまでに領域内で共通利用するネットワークロボットシステム(センサネットワークと共生型ロボット)を構築したが,領域内での利用者の要請に基づいて改良し,適宜必要なインタフェースを提供する作業を進めた.具体的には,計画研究班であるA03班が共生型ロボットを用いた協調学習実験を実施する際に用いる遠隔制御インタフェースに,人位置計測システムの計測結果の表示や地図上での位置指定によるロボットの自動移動の機能などを加えた.また,A01班で実現されているマイクロフォンアレイシステムと人位置計測システムを連動させ,環境内の人位置だけでなく発話者の位置を特定し,いつ,誰が,どこで発話したのかを検出するAudioTrackerシステムを共通実験プラットフォーム上に実装した. このプラットフォームを用いて,東京・関西に設けた拠点での実験の支援を行った.計画研究班のA02班や公募研究班など,合計8件の実験を支援した.ロボットは故障することも多く,不具合の生じやすい肩モーターの交換,関節部など可動部での擦れによるノイズ除去のための配線ケーブルの交換,熱によるシステムの不安定化解消のための排熱効率の向上,といった保守作業を行った.拠点外でのフィールド実験についても支援を行い,A03班で実施した芦原小学校(埼玉県戸田市)での協調学習ワークショップでは,実証実験に使用する卓上型共生ロボットと共通実験プラットフォームを環境内に設置し,約30人の小学生を対象としたジグソー学習法に基づいた協調学習実験を可能にした.この改良は,その後東京拠点での定期的な協調学習ワークショップの開催などの基盤となっている.領域会議を4回(全体会議2回,総括班会議2回)開催し,領域内での最新の研究成果を共有するとともに,新しい学術流域を創生するために,領域内でどのような研究を推進していくべきかについて議論を深めた.また,ICSL,Humanoidsといった国際会議でワークショップを開催,日本ロボット学会でオーガナイズドセッションを行うなど,日本から新たな研究領域が立ち上がりつつあることをアピールする広報活動を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A03を中心に,協調学習を有効に進める条件を探る実証実験が順調に進んでおり,その遂行のための要請に基づくインターフェイスの改良・改善のサイクルが安定して回るようになった.これにより,A03では拠点外での実験的な協調活動も可能になり,実験対象年齢も広がりつつある.ロボットが実験室的環境から教室や不特定多人数の集まるワークショップの場で子ども同士の創造的な活動をより効果的に誘発する可能性が見えつつあり,こういった活動が,A02を含め領域全体の活動を活性化しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
今後,特に今年度は中間評価を受け,領域間の関係をこれまでより密にし,人とロボットの共生関係をより現実に起き得る場面で支援する方向で研究を進める.領域内の連携,特に人間科学,認知科学からロボット工学へのフィードバックとそれに基づく融合研究の進展については,今後,ベンチマークとなる場面でロボットと接する人の行動や認知に関わる定量指標を明らかにするなど具体的な連携の仕組みを構築する.さらに学校現場や不特定多数を対象にした創造性開発ワークショップなどでの協調活動に対する実証実験,高齢者の協調活動支援など現実社会で起きる協調活動を扱って多様なデータを収集,分析し,こういった場面から人とロボットの共生を可能にするロボット工学,認知科学分野への新たな課題を抽出して,3計画班全体の問題意識に共通する課題を設定して新たな学術領域を設計する.
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