総括班
旧人と新人の交替劇の真相は現代人起源論争で未解決の話題として脚光を浴び盛んに研究されてきた。そして、競合説、疾病説、環境仮説、生存戦略説、生業仮説、神経仮説などの仮説モデルが相次いで提唱された。近年、旧人と新人が交雑していたことが分かり、旧人は新人によって一掃され忽然と消えていったとする単純な交替劇シナリオは見直され、同化吸収説、混血説と称される新仮説が提唱されている。この世界的な交替劇論争の世界にわれわれは、これまで誰も唱えたことのない作業仮説を定義し、チャレンジした。それが、「学習仮説」(Learning Hypothesis)である。学習仮説の最大のポイントは、新人と旧人のあいだにはもともと、学習能力に違いがあったとする主張(=仮説)にある。その違いが結局、両者の命運を分けることになった。以上が学習仮説の骨子である。この仮説を、考古学、文化人類学、数理科学、環境科学、生体力学、神経科学諸分野の連携研究のもとに検証した。結論として、旧人社会と新人社会の間には文化発展のスピードや種類内容に違いが存在し、それは旧人と新人の学習能力差が主因で起こったことを明らかにした。学習能力に勝り技術革新を促進し現代人的行動を発展させた新人の社会は、相対的に学習能力に劣り文化発展が停滞し遅れを取ることになった旧人社会との競争に勝利したというシナリオである。また旧人と新人の化石脳形態差から、新人脳機能(=学習能力)が旧人よりも勝っていることを解剖学的証拠でも明らかにし、交替劇研究に画期的な道筋をつけた。本研究アプローチは交替劇研究において例がなく、世界的に注目された。そして、学習仮説は、交替劇の経緯を説明するさまざまな既設仮説を根源にさかのぼって検証するベースとなる作業仮説として評価され、世界的な交替劇論争にインパクトを与えることになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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