研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
22108001
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
及川 英秋 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (00185175)
|
研究分担者 |
池田 治男 北里大学, 感染制御科学府, 教授 (90159632)
斉藤 和季 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (00146705)
江口 正 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (60201365)
五味 勝也 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (60302197)
金谷 重彦 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (90224584)
|
キーワード | ペプチド合成酵素 / 大腸菌 / 抗腫瘍性物質 / 化学酵素合成 / 生合成 |
研究概要 |
AO1班とAO2班の共同研究として麹菌を用いた異種遺伝子発現系を活用し、DNAポリメラーゼα特異的阻害剤アフィディコリンの効率的生産(130mg/L相当)を達成した。糸状菌は生物活性物質の宝庫であるが、一般に物質生産に必要な遺伝子数は10個以下であり、今回の成功はこうした多くの物質を麹菌で生産できる方法論を提供したことになる。天然物にはポリエーテルと呼ばれる化合物群があるが、その骨格合成を担う鍵酵素であるエポキシド加水分解酵素の詳細な触媒機構が、酵素の結晶構造解析から明らかにされた。このほか特徴ある化学構造と有用な生理活性を持つ微生物が産生する二次代謝産物生合成系を遺伝子・酵素レベルで精密に解析することを目的として、マクロラクタム配糖体抗生物質ビセニスタチンのスターター生合成を酵素レベルで明らかにし、さらにアミノ配糖体抗生物質カナマイシンの生合成の最終段階を明らかにした。AO2班では、安定かつ巨大な生合成遺伝子群の発現を実現するべく次世代線状レプリコンベクターの開発を検討した。これまでにS.avermitilis SUKA株の異種生合成遺伝子群発現の有用性は確認されているが、さらにStreptomycesの特徴的な線状ゲノムを利用し、効率など今後の解決するべき点は残るものの、およそ80-100kbの断片の導入に成功した。AO3の成果として、植物おける二次代謝産物の生合成遺伝子のマイニングについて次世代シークエンサによる遺伝子発現プロファイルとメタボロミクスを組み合わせた手法について、文献および総括班内外のメンバーによる議論によって調査と検討を行った。特に、国際的な動向についても研究調査を行い、次年度以降の研究推進に役立つ調査検討を実施することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AO1班とAO2班、AO2班内の共同研究の成果として、多数遺伝子同時導入法と汎用性宿主の組合わせによる有用物質生産系が開発され、まだ例は少ないながら物質生産が可能になった。またAO3班を中心により難易度の高い植物の天然物生合成遺伝子同定法についてもオミクス解析を基軸とした方法論が提出されつつある。まだAO1班とAO3班が共同で世界でも例のない遺伝子から天然物の構造を予測するデータベースの構築も特定の天然物群を対象に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
標的とする有用な生物活性物質を酵素あるいはそれをコードする遺伝子を自在に操り、生産するという目的に向けて、個々の研究者が独自の方法で研究を進めて成果が上がりつつある。領域内での共同研究が活発化しているが、まだ十分であるとはいえない。従来通り、成果発表や若手シンポジウムなどで情報交換を行うだけでなく、さらなる機会を設定する。例えば研究者同士の相互訪問なども積極的に財政面でバックアップし、個々の技術を他の研究室に移転するための講習会や操作法のビデオ撮影(百聞は一見に如かず)による配布などにより、領域全体の共有にすることを通して、さらなる成果につなげる予定である。次世代を担う研究者の国際的視野を広げるため、著名研究者を招いた国際シンポジウム開催やDC学生などの海外発表支援も新たに進める。
|