総括班
総括班では、領域全体の目標を達成するために、①解析ツールの標準化・解析データのデジタル化を支援・推進すること、②計画班での交流のみならず、公募班を加えて研究をダイナミックに展開させること、特に、数理モデルとのフィードバックを定期的に行う機会を設定して理論と実験との両方を先鋭化させていくこと、③<形をつくる>再生研究を再生医療研究者へと浸透させていく―という3つの明確な使命をもって活動を行っている。① 再生研究の標準化: 公募班の林利憲博士の尽力によりイベリアイモリが班全体に導入され、再生できる有尾両生類の実験動物としての標準化を行った。②再生動物での遺伝子ノックアウト法の開発: 実験動物の標準化により、再生関連動物を使った遺伝子ノックアウト法が開発され、再生研究が格段に進歩する環境を整えた。③IR-REGOを用いた細胞追跡法の導入: 再生過程での細胞の挙動を単一細胞レベルで追跡する方法が基生研の亀井博士によって開発され、それを導入した。そして、IR-REGO装置を東北大に設置した。④再生遺伝子のデータベース化: 本年度からMiSeqシークエンサーが導入されたことで、飛躍的にデータ量を増やすことに成功した。⑤研究班内での交流の促進事業: 理論と実験の交流ワークショップを理論生物の大御所のMeinhardt博士を囲んで開催し、また新たな両生類班を組織し、カエル・イモリを使った再生研究の交流を促進した。⑥再生医療研究者との交流プラットホームの構築: 再生研究トレーニングコースを基礎生物学研究所で開催した(開催のために総括班で森事務局員を雇用)。また、3月に日本再生医療学会で『三次元構造の再生を目指す』というシンポジウムを開催し、大きな反響を得た。さらに、理研CDBで2回めの国際シンポジウムを開催し、海外の学会などに構成員を派遣して国際的なプラットホーム作りを行った。
1: 当初の計画以上に進展している
再生遺伝子のデータベース化については、リファレンスの作成と、再生過程の時系列に応じた発現プロファイルのデータの作成ができたが、ロッシュ454を用いたトランスクリプトーム解析ではリード数が少ないために、定量性が低いことが判明し、定量PCRを行っていたが、MiSeqの導入により、より定量性の高いデータをまとめて取得できるようになったことは大きな進歩となった。また、イベリアイモリの導入、それらを用いた遺伝子ノックアウト法の確立は当初に予定していなかった事項であり、再生研究の飛躍的な進展を可能にするものとして特筆に値する。さらに、再生医療学者との共通プラットホームつくりについても、日本再生医療学会の会場を満杯にするだけの魅力を提供できたことは歴史的な転換点と位置付けられた。中間評価で指摘された、論文の数と質の両方の改善についても、Nature誌への出版ができたことで評価してよい。
MiSeqの導入によってデータ量が飛躍した分、データをより効率よく整理して、みんなが利用できるようにするためには、この分野の専門家(SE)にシステムを組み直してもらい、研究班が終了後にも有効活ができるようにしたいと考えている。また、研究成果が順調に出てきたことで、論文作成の方が追い付かない状況になってきているので、この分野の英語論文作成のプロを雇用して、研究期限内に研究班の成果を全部出しきれるように促進したいと考えている。また、創刊したばかりのOA誌 “Regeneration”を積極的に活用して海外発信を強化する予定である。再生できない生き物を遺伝子操作で再生できるようにした研究成果を得たことで、これを足掛かりとして日本再生医療学会/日本炎症再生医療学会との交流促進、再生医療分野との共通プラットホームの実現を目指すとともに、公開講座の開催することで一般の方への積極的なアウトリーチ活動も展開する予定である。
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すべて 雑誌論文 (42件) (うち査読あり 34件) 学会発表 (96件) (うち招待講演 16件) 図書 (5件) 備考 (2件)
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