研究領域 | 先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空への新たな挑戦 |
研究課題/領域番号 |
23104001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浅井 祥仁 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60282505)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | LHC / テラスケール / ヒッグス / 超対称性 / 真空 |
研究実績の概要 |
本研究領域の大きな一つの柱である「ヒッグス粒子」をついに発見した。ノーベル物理学賞が直ちに与えられてことが示すように、物理学史上極めて重要な成果であり、本領域が目指すように、素粒子分野ばかりでなく、宇宙物理学や、数理研究にも大きなインパクトがあった。本領域の計画研究A1-A4で直接この研究に携わり歴史的な研究の主要な成果をあげると同時に、研究計画Bは、ヒッグス粒子の質量が意味することを、素粒子研究から初期宇宙に関わる広い領域に渡る成果を上げることができた。この重要な研究に大きく貢献できたのは本領域の研究成果である。平成26年度は、発見したヒッグス粒子の質量(125.09+-0.24GeV)や、結合強度の測定を行った。質量はすでに、0.2%の高い精度になっている。W粒子、Z粒子、トップクォーク、タウレプトンへの結合定数の測定は、まだ大きな誤差10-20%があるが、標準理論の期待される値と一致している。特に、タウへの結合定数が分かり、レプトンも含めて素粒子質量の起源が分かった。これらの研究には系統誤差の解明が極めて重要であり、検出器の理解を深め、標準理論起源のバックグラウンドの解明を進めた。総括班はこれらのA班の研究を総括した。また、125GeVのヒッグス粒子の存在が意味することを、領域全体で深め、これから始まるRun2実験で期待される新粒子の可能性やその研究方法などの準備研究を行った。特に、超対称性理論の中で考えると、これまでドグマだった「自然さ」と言う概念が大きく揺らぐことになる。この概念を緩めると、素粒子研究や、宇宙初期の現象の描像に与えるインパクトは大きかった。ヒッグス粒子やLHC実験の一般の方の興味は著しく高く、メディア(新聞、TV,科学雑誌)を通して正しく成果を伝えると同時に、多数の一般講演会を通して積極的に発信を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究領域の大きな一つの柱である「ヒッグス粒子」をついに発見し、その性質を調べた。質量(125.09+-0.24GeV)を0.2%の高い精度で測定し、他の素粒子への結合定数の測定(W,Z,トップ、タウへの)は、まだ大きな誤差10-20%があるが、標準理論の期待される値と一致している。これらの新しい結果をうけて、本領域は実験・理論が共同して、新しい素粒子・宇宙像の構築を行い、多くの新しいアイデアを生み出した。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度からLHCはエネルギーを約2倍に増強して、実験を再開する。本領域のもう一つの柱である「超対称性粒子」発見の期待がこれから極めて重要になる。また、125GeVのヒッグス粒子が意味することを考え、従来の軽い超対性の描像を捨て、重い超対称性粒子の発見が可能な様に新しい研究を進めている。速やかに発見を行う為に実験・理論が共同して組織的に研究を進めていく。
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