研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
23105001
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 眞浩 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50217428)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 有機分子触媒 / ものづくり / 環境調和 / 有用物質 / 触媒 / 水素結合 / 分子認識 / 不斉合成 |
研究実績の概要 |
有機合成化学は、医薬品、農薬からファインケミカル、さらに機能性材料等の様々な有用物質の合成法を提供することにより、医学、薬学、農学、材料科学などの分野に大きく貢献し、高度文明社会を支えてきた。高度な「モノづくり」の原点を支える基礎的かつ重要な研究分野である有機合成化学は、日本の「お家芸」とまで言われるようになってきた。しかし、天然資源の乏しい我が国の将来にとって、現段階の学術・技術水準に甘んじることなく、今世紀の最大命題である「希少・枯渇資源の有効利用と再生可能資源の活用促進を原則とした元素戦略」、「持続可能な循環型社会の確立」に即した最先端の「モノづくり」(高付加価値の新機能性材料や医薬品の創製)の科学と技術を確立し、科学技術創造立国として、21世紀も世界的優位性を保つことが肝要である。本領域研究では、研究グループ間の共同研究を促進することで「有機分子触媒」をキーワードとする有益な知的基盤を共有・統合化し、学問領域として確固たる地位を確立するとともに、革新的な科学技術の開拓に基づいた「モノづくり」の新たな未来像を創出することを目的とする。有機合成化学者を主体とする研究チームを組織し、1)有機分子触媒の制御システム設計開発(A01)、2)有機分子触媒による分子変換システム開発(A02)、3)有機分子触媒による実践的有用物質合成(A03)の3つの研究項目を設定して理論化学者との連携のもとで総力を挙げた開発研究を行っている。総括班ではこれら研究項目内、研究項目内の人的交流ならびに研究推進を促すため24年度は6月に本学術領域研究の全体会議を、また、10月には第二回公開シンポジウムを開催した。これらのほかに、有機分子触媒に関する研究の若手セミナーを9月に、本領域研究に関連するシンポジウムを3件協賛することで、研究者間の人的交流を積極的に促した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本新学術領域では、有機分子触媒をキーワードとする研究グループを組織し、総括班が取りまとめることでグループ間の人的交流を積極的に促し、有益な知的基盤を共有・統合化し、学問領域として確固たる地位を確立することを目標としている。本年度は6月に計画班員ならびに公募班員が一同に会した全体会議を開催し、本領域研究の趣旨を説明するとともに、グループ内外で積極的に共同研究の協力を総括班より求めた。10月の第二回公開シンポジウムでは、公募班員を中心に最近の研究成果を発表するとともに、学生等によるポスター発表を開催することで、情報交換をする上で有意義な場を設けた。一方、本領域の次世代を担う若手研究者間の交流を促すことを目的として、40歳以下の研究代表者ならびに計画班のグループに所属する若手研究者を一同に会して若手セミナーを9月に開催し、さらなる発展を目指すきっかけとした。関連するシンポジウム等として、8月に日本化学会関東支部が主催した講習会「進化する有機分子触媒-その最先端と展望」において、本領域の班員4名が講師として参加し、最新の研究成果を発表するとともに、本領域の重要性ならびに潜在的な可能性についてアピールした。12月にはハワイにて米国の関連研究者が一同に会して開催された国際会議を協賛し国内外間における人的交流を支援するとともに、情報交換を積極的に促した。平成25年3月には日本化学会において、「有機分子触媒の最先端」と題する特別企画を催し、本領域を代表する若手研究者による講演会を開催した。これらの活動により、円滑な人的交流、情報交換を積極的に促した結果、学術誌への掲載には至らなかったものの、年度末に開かれた学会において今後の発展が期待される共同研究が多数報告されるまでに至ったことから、当初の計画以上に進展していると評価される。
|
今後の研究の推進方策 |
産業界との積極的な交流によって本学術領域のキーワードとなっている有機分子触媒を実践的に活用することで「モノづくり」へと貢献することが最大の目標となっている。今後は、現在進めている「国際交流」、「若手交流」に加えて産業界との交流を深めるため、産業界の研究者が多く参画している日本プロセス化学会との合同でのシンポジウムを開催するなど、産業界と積極的な関わり作っていくことが重要と考えている。平成24年度は実現することができなかったが、平成25年11月には日本プロセス化学会との合同シンポジウムを開催することがすでに決まっており、現在、その準備のため打ち合わせを行っている。 また、「国際交流」、「若手交流」は今後も継続し本領域の活性化を図る。まず、「国際交流」としては平成25年4月には英国との二国間交流を目的とした国際会議を、5月には国際シンポジウムを開催するよう準備を進めている。一方、「若手交流」は24年度に開催した際は33名と中規模で開催したが、25年度は50名まで拡大し9月に開催を予定している。 これらの活動を通じて本学術領域を学問分野として確固たる地位の確立を目指す。
|