研究領域 | 現代文明の基層としての古代西アジア文明―文明の衝突論を克服するために― |
研究課題/領域番号 |
24101001
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
常木 晃 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70192648)
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研究分担者 |
丹野 研一 山口大学, 農学部, 助教 (10419864)
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
山田 重郎 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30323223)
谷口 陽子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40392550)
柴田 大輔 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40553293)
久田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50156585)
黒澤 正紀 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50272141)
八木 勇治 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50370713)
三宅 裕 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60261749)
池田 潤 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60288850)
安間 了 筑波大学, 生命環境系, 講師 (70311595)
丸岡 照幸 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80400646)
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研究期間 (年度) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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キーワード | 西アジア文明 / 古代西アジア文明 / 現代文明の基層 / 文明の衝突 / 人類史の転換点 |
研究実績の概要 |
総括班の総務、事務局、シンポジウム担当がコーディネートして2014年6月29日・30日に、全ての計画研究班が参加して領域を横断する国際シンポジウム「西アジア文明学の創出Ⅰ:今なぜ西アジア文明なのか」を東京池袋サンシャインシティ集会室を会場として実施しました。本シンポジウムには海外より各研究分野で最先端の研究者10名を日本に招へいし、西アジア文明学の基盤について研究発表を行い、各計画研究代表者がそれを解説するという形式で、10のセッションを設け、最後にトロント大学のハリソン教授による総括とパネルディスカッションを行いました。広く一般に公開しましたが、2日間とも非常に盛況でした。このシンポジウムに合わせてアブストラクト集も日英語で印刷配布していますが、2015年度に英語ヴァージョンのプロシーディングスの出版を予定しています。それによって、「西アジア文明学」の形が見えてくるものと期待しています。 またそれぞれの計画研究班が数多くのシンポジウム(多くの場合海外からの研究者が含まれています)や研究会を開催していますが、総括班としてそれを強力にコーディネートしてきました。さらに領域全体の成果を日本で広く一般に問うために、日本語の図書として「西アジア文明学への招待」を2014年12月に出版しています。 2014年度後半には、領域中間評価で指摘された点を踏まえて、特に古代西アジア文明社会と中世イスラーム社会、近現代の社会を結びつける歴史的連続性について特に注目した研究会を複数回開催しています。イスラーム中世史の専門家や西アジア文化人類学の専門家、歴史理論の専門家などと強力に連携しながら、古代西アジア文明の中で特に近現代文明の形成に貢献してきた要素を明確かつ大胆にくみ取る作業も進めていきます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年秋に領域全体の中間評価が行われ、「おおむね順調に進展しているが、一部の計画研究に遅れがみられる」というA-の評価をいただいています。 2014年度については、特に領域横断型の大きなシンポジウムを6月に開催して成功させたこと、および12月に本領域研究の意義を語るための書籍『西アジア文明学への招待』(悠書館)を出版したことが特筆されます。シンポジウムの成果は、自然科学と人文科学の成果をうまく融合させることが、本領域研究を成功に導く大きな基盤となり得ることを明らかにしました。特に、地質学分野の研究で、古代西アジアが地球上の他のどの地域よりも格段に、石材や銅、錫、鉄など人々にとって有用な鉱物資源が利用しやすい形でしかも豊富に存在していたことが明確になってきました。コムギや各種マメ類、ウシ・ブタ・ヒツジ・ヤギという現代文明の食の基本となる動植物の野生種が西アジア地域に存在していたことが西アジア型の農耕や文明発生への大きな前提要素であることは以前からよく知られていましたが、技術や文明の発達に不可欠なこうした鉱物資源もまた、古代西アジアに広範かつ豊富に存在していたことが明らかにされ、改めて古代西アジア地域の文明発生への潜在力の大きさが認識できました。 しかし自然的な潜在力がどのように文明発展へと結びついていったのか、それが古代、中世を通じて近現代までどのように展開していったのかについての解明は、まだ十分になされているとは言えません。古代西アジア文明が達成したものが現代文明とどのように関わっているのかについて、もっと人文的、歴史的な説明が求められていると言えます。そのことが中間評価においても指摘されていますし、自己評価が「(1)当初の計画以上に進展している」とならない理由でもあります。
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今後の研究の推進方策 |
中間評価でやや問題があると指摘された3点の中の2)は、領域全体の研究成果の取りまとめに向けて「個々の計画研究の成果をもとに、領域全体としての研究成果の取りまとめ、統一的知見の獲得(全体の理論的・概念的な構築を含む)に向けて、具体的なテーマ設定とそのための計画を検討する。」という指摘で、特に総括班が対処しなければならない問題が含まれています。 各研究計画の成果を横断的にまとめる概念として西アジア文明の先進性と普遍性を設定していますが、先進性と普遍性をもたらした背景としての自然環境的要因(3大陸の結節点であり、地形や地質上の大いなる多様性と普遍的動植物や銅・鉄などの死活的資源の存在など地域全体として圧倒的優位性があること)と、それに呼応する人文的要因(多様な資源の偏在の中で、言語的文化的に大きく異なる民族群が重層的にダイナミックに交替していくこと)を具体的テーマとして追究していきます。これらの点については、2014年度の領域横断シンポジウムでかなり鮮明になってきたと自負していますが、そうした研究をさらに進めるつもりです。 先進的普遍的文明としての西アジア文明についてこれまでのように各研究班の研究の進展を報告しあう機会を充実させるだけでなく、総括班の強力なイニシアティブで、研究成果をより広くアカデミックな環境にさらし、それを現代文明の理解に役立てるために、人類学、歴史理論、国際政治学などの専門家を招いてのワークショップを設ける計画を緊急横断的研究として立ち上げます。既に2014年度後半からは、イスラーム中世史や文化人類学の研究者と積極的に対話するべく研究会を実施しており、古代西アジア文明と現代文明とを繋ぐ架け橋を、徐々に構築していくつもりです。
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