総括班
本領域では世界的に類を見ない細胞競合の統合的融合研究拠点を構築し、多角的かつ包括的に細胞競合研究を強力に推進する。それによって、細胞競合を制御する分子メカニズムの全貌を解明し、それらがどのように多細胞生命体の成立原理すなわち個体発生や恒常性維持に関わっているのか、またその破綻がどのような疾患や病態を引き起こすのかを明らかにする。本領域を推進することにより、「細胞競合」の新たな概念を確立し、生命科学の様々な分野に大きな波及効果をもたらす新次元の研究領域へと発展・昇華することを目指す。平成27年度から、研究計画班に加えて18の公募班が加わり、本格的に細胞競合研究を推進する体制ができた。平成27年9月には細胞競合研究の世界的権威である海外演者5名を招聘し、第1回細胞競合国際シンポジウムを京都で開催した。学会への参加者は100名を越える盛況を呈した。非常に重要なことに、このシンポジウム開催によって日本における細胞競合研究の興隆を世界に強く発信することができたことのみならず、海外の細胞競合研究者を強くinspireし、平成28年度にはマドリッドとフロリダで細胞競合国際シンポジウムが開催されることとなった(マドリッドでのシンポジウムは新学術領域細胞競合班と共催)。このように我が国における細胞競合研究を強く発信できたが、それ以上に、世界の細胞競合研究そのものに大きなインパクトを与える非常に重要な機会となった。国際シンポジウムの翌日には領域会議を開催し、研究計画班、公募班の研究代表者がそれぞれの研究の進展について報告をし、情報を共有することによって、領域内の共同研究のさらなる促進に努めた。平成28年3月には細胞競合コロキウムを札幌で開催し、若手研究者を中心に80名の参加者が、それぞれの研究内容を発表した。質疑応答も熱く活発なものであり、次世代の細胞競合を担う若手の育成のいい機会になった。
2: おおむね順調に進展している
細胞競合は新しい研究分野であり、細胞競合そのものについての啓蒙と共同研究の促進が領域としての大きな課題であるが、両者ともにこれまでのところ順調に進展している。平成27年度に開催した国際シンポジウムは、世界的にも細胞競合を冠した初めての国際学会であり、我が国において細胞競合研究が強く推進していることを国内外に示す非常に重要な機会となった。また、分子生物学会、癌学会、細胞生物学会でも新学術領域共催で細胞競合についてのシンポジウムやワークショップを開催し、細胞競合については「ホットなトピック」として強い印象を与えることに成功している。領域内での共同研究も順調に進展している。複数の研究代表者による研究技術支援センターの運営によって、様々な実験技術の共有が行われている。さらに、領域会議や若手の会議で互いの研究内容を共有することによって、領域班内での共同研究が数多く進展し、複数の研究室が共著となっている論文が現在多く投稿準備中、あるいはすでに投稿されている。また平成27年度は、領域内若手研究者共同研究推進費を計上し、領域内での若手研究者間の共同研究に数十万を供与することによって、3組の共同研究を推進することができた。
昨年度に引き続き、平成28年度は研究計画班と公募班を含めた細胞競合研究グループ間における交流と共同研究を促進するために、さまざまな取り組みを行っていく。まず、4月に細胞競合研究分野における世界的権威であるベルン大学のEduardo Moreno博士と彼の研究室メンバーを日本に招聘し、細胞競合班のメンバーとともに「Cell Competition International symposium」を開催する。Moreno博士が行っている研究についての知見を深めるとともに、細胞競合班のメンバーの研究を紹介し、情報交換とその細胞競合班内での共有を進める。また8月に領域会議、来年3月に若手研究者対象の「細胞競合コロキウム」を開催する。さらに、新学術他領域の「ダイイングコード」班との共催で来年1月に合同若手研究者研究会議を行い、さらなる細胞競合研究の啓蒙と若手研究者の教育を深化させていく。それに加えて、これまでに引き続き、複数の研究代表者による研究技術支援センターの運営を行っていく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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