計画研究
本研究の目的は,「光・二酸化炭素等の外部刺激に応答する金属錯体」を開発し,光駆動型の人工酵素システムを構築することである。具体的なターゲット反応の一つは,二酸化炭素の還元反応(炭酸固定)であり,生体反応系における感応性化学種の「機能モデル金属錯体」の開発を中心に研究を進めている。特に,(1)光エネルギー変換において重要な役割を果たしている「光感応性化学種」,(2)還元酵素における重要な中間体(感応性化学種)として知られている「低原子価金属種」に着目し,これらのモデル金属錯体を合成するとともに本研究領域のA04班が目的として掲げる「人工酵素システムの構築」に挑戦している。さらに、領域内共同研究を通して、生体反応系における複合機能の解明や感応性金属錯体の新機能を開拓している。平成27年度は、当初の計画通り、新規金属錯体の開発・探索に重点を置いて研究を進めた。その結果、新規な光感応性金属錯体として、(a)拡張性が高く、酸素応答性を有する強発光性のテルビウム錯体(発光量子収率:91%)、(b)針状結晶が光誘起屈曲現象を示すロジウム二核錯体および(c)結晶状態で配位子由来の室温リン光を示すガドリニウム錯体の合成に成功した。さらに、低原子価種を経由して小分子を活性化する新規金属錯体として、(d)窒素を活性化するルテニウム錯体および(e)酸素を活性化するニッケル-鉄二核錯体の合成に成功した。上記成果および本研究遂行に伴い派生した成果は、錯体化学会第65回討論会で発表するとともに7報の学術論文としてまとめた。
2: おおむね順調に進展している
実施計画に沿って、新規金属錯体の開発・探索に重点を置いて研究を進めた。その結果、光感応性金属錯体として、3つの新規錯体の開発に成功した。さらに、低原子価種を経由して小分子を活性化する新規金属錯体として、2つの新規錯体の開発に成功した。上記成果および本研究遂行に伴い派生した成果は、5件の学会発表および7報の学術論文としてまとめた。
平成28年度は、平成27年度に引き続き新規錯体の開発・探索(重点課題1および2)を進めるとともに、当初の計画通り、人工酵素系の構築および模倣にとどまらない新機能開拓(重点課題3および4)に関する研究を進める。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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