研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H05797
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 哲孝 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50181904)
|
研究分担者 |
山口 和也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50334313)
|
研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
|
キーワード | ポリオキソメタレート / 分子触媒 / ナノ構造体 / 酸化反応 / 新反応開発 |
研究実績の概要 |
本提案研究では、金属酸化物クラスター、結晶性ナノ酸化物、金属ナノ粒子を基盤として高機能触媒の設計を行い、分子状酸素(空気)を酸化剤とした(あるいは酸化剤を用いないアクセプターレス)、脱水素反応、酸素添加反応、脱水素クロスカップリング、といった高難度酸化反応の実現を目指す。平成28年度は、主として高効率脱水素反応の開発に注力した。 フェノールは医薬、高分子、染料などの合成原料として有用な化合物であり、主にクメン法により製造されている。クメン法は種々の問題点があるため、これらの問題点を回避できる新規フェノール合成法の開発が切望されている。本研究では、層状複合水酸化物MgAl-LDHに担持したAu-Pd合金ナノ粒子触媒(Au-Pd/MgAl-LDH)が分子状酸素(空気)を酸化剤とする種々のシクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンのフェノールへの脱水素反応に高い活性を示すことを見出した。本反応系は幅広い基質適用性を示し、様々な基質から対応するフェノールが高い収率で得られた。さらに、触媒の改良を加えることにより(Pd/NiMgAl-LTH、NiMgAl三元系層状複合水酸化物にPdを担持)、酸化剤すら不要な高効率アクセプターフリー脱水素反応系を構築することができた。Pd/NiMgAl-LTHを触媒として用いると、種々のシクロヘキサノール/シクロヘキサノンから対応するフェノールが高収率で得られた。シクロヘキサノールの反応では、フェノールとともに3当量の水素(H2)の生成を確認した。(i) 担体NiMgAl-LTHの塩基性、(ii) PdとNiの協奏機能より反応が効率よく進行することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画では、過酸化水素や分子状酸素を酸化剤として反応開発をターゲットとしていた。本年度は計画通り分子状酸素を酸化剤としたいくつかの高効率酸化反応を開発するとともに、酸化剤すら不要なアクセプターフリーな脱水素反応、特に脱水素芳香環形成反応の開発にも成功した。また、計画班内での共同研究も行い、3報の共著論文を発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27~28年度の検討において、酸化的脱水素には金、パラジウムやそれらの合金ナノ粒子、飽和炭化水素のアルケンへの酸化的脱水素やシクロヘキサンの脱水素芳香環形成反応には金-パラジウム合金ナノ粒子が有効であることを明らかにした。平成29年度は、DFT計算などを用いて上記の脱水素反応の反応機構を領域内共同研究として実施する。反応機構の情報をもとに、ナノ粒子のサイズや構造、合金の組成などの影響を各反応に対して詳細に検討し、さらなる高活性な触媒を設計する。金属ナノ粒子触媒の担体効果は一般的に顕著であるため、担体効果についても詳細に検討する。脱水素を効率よく進行させるためにどのような担体が最も効果的かについて、例えば、担体の表面積、酸・塩基特性、酸化・還元特性といったパラメータによって整理することにより一般化する。また、平成27~28年度年度開発に成功した還元結晶化法による結晶性ナノ酸化物合成の組成および構造の展開を図り、各種結晶性ナノ酸化物を調製し、それらを触媒あるいは上記ナノ粒子の担体として用いて触媒設計を行う。設計した触媒を用いて新反応(例えば、シクロヘキサノールを原料としたフェノール、アニリンなどの基幹化合物合成、脂肪族アルデヒドやケトンの選択脱水素反応、タンデム酸化反応、脱水素クロスカップリングなど)を探索する。
|