研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H05799
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中尾 佳亮 京都大学, 工学研究科, 教授 (60346088)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒 / 不活性結合活性化 / 高難度分子変換 / 遷移金属 / ルイス酸 |
研究実績の概要 |
有機分子にユビキタスなC-H,C-C,C-N,C-O結合を活性化して直截的に官能基化する反応は,従来のように事前の官能基化の必要がないため,原子およびステップ効率の観点からきわめて有用である。これら不活性結合の活性化・変換は,近年世界中で活発に研究されている。様々な遷移金属触媒を用いる多様な反応が報告されているが,それらの多くは,遷移金属に配位子として作用する特殊な配向基を必要としたり,分子構造の歪みの解放を利用するものである。本研究では,配向基や歪みなど「基質の工夫」に頼ることなく,「触媒の工夫」によって不活性結合の直截的変換を実現することを目指す。平成27年度は,新しいC-H結合官能基化として,インドールをはじめとする比較的電子豊富な複素環のアルキル化反応において,嵩高いN-ヘテロ環状カルベン配位子を有するニッケル触媒が有効であることを見出した。インドールやピロール,ベンゾフラン,フランの直鎖選択的アルキル化反応が,いずれもこれら複素芳香環の2位選択的に進行することを明らかにした。既報の例では,インドールの窒素あるいは3位に配向基が必要であったり,脂肪族アルケンを用いた場合の直鎖選択性の発現は難しかった。またC-O結合官能基化として,Ar-OH結合選択的な水素化分解反応が,嵩高いNHC配位子を有するニッケル触媒存在下,ヒドロシランを還元剤として進行することを見つけた。均一系の反応として,イリジウム触媒と水素,あるいは過剰量のLiAlH4と塩基を用いる手法が最近報告されているが,比較的過酷な反応条件を必要としたり,ベンゼン環の水素化,アリールアルキルエーテルの水素化分解などの副反応も進行する問題があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C-H,C-C,C-N,C-O結合を活性化して直截的に官能基化する新しい反応の創出を目指す中で,C-H結合およびC-O結合官能基化において成果を得ることができた。ここで得られた知見は,C-C結合あるいはC-N結合官能基化の研究にも寄与する成果であり,研究進捗は概ね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
C-H結合官能基化については,芳香環やアルキル基の位置選択的C-H官能基化への展開を検討する。またC-N, C-O 結合官能基化については,芳香族アミンやニトロ化合物のC-N結合や,フェノールのC-O結合活性化を伴うクロスカップリング反応,不飽和結合の官能基化反応を検討する。
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