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2015 年度 実績報告書

多座配位子の創出に基づく金属錯体反応場の構築と新反応開発

計画研究

研究領域高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出
研究課題/領域番号 15H05800
研究機関東京工業大学

研究代表者

岩澤 伸治  東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 教授 (40168563)

研究期間 (年度) 2015-06-29 – 2020-03-31
キーワード有機化学 / 合成化学 / 遷移金属錯体
研究実績の概要

本年度の研究ではまず、PSiP-ピンサー型パラジウムトリフラート錯体を触媒とする、アルケンの脱水素ボリル化反応に関するこれまでの知見をもとに、ジボロンとボラン間でのホウ素交換反応による、2つのホウ素上に異なる置換基を持つ非対称ジボロン合成について検討を行った。その結果、ビス(ピナコラート)ジボロンと1,8-ジアミノナフタレンを有するボランとの反応において、P(Oi-Pr)3の配位したシラン配位錯体を触媒として用いることにより、目的の非対称ジボロンが良好な収率で得られることを見出した。本反応の基質一般性について検討を行った結果、HBdanに対し、ジボロンとしてピナコールエステル以外にも、さまざまなボロン酸エステルを用いることが可能であり、またボランとしてHBdan以外に、o-フェニレンジアミンを有するボランが適用可能であることも明らかとした。
次に、炭素-水素結合活性化に必要な配位座が比較的容易に生成することを期待して、上述のピンサー配位子のリン原子を一つ窒素原子とした、非対称型ピンサー配位子をもつ白金触媒を合成し、それを用いた芳香族炭素-水素結合のボリル化反応の開発を目指し研究を行った。
種々検討を行った結果、過剰量の1,3-ジフルオロベンゼンとビスピナコラートジボロン(B2pin2)に対し、触媒量のPSiN-ピンサー型白金錯体とn-BuLiをメシチレン中加熱条件下で作用させると、sp2炭素-水素結合のボリル化反応が進行し、フッ素置換芳香族ボロン酸エステル誘導体が位置異性体混合物として高収率で得られることを見出した。この際ボリル化反応は、最も込み合った2位の炭素-水素結合で優先して進行した。また、基質適用範囲について検討した結果、アレーン上のフルオロ基が、反応性の向上と位置選択性の制御の2点で重要な役割を果たしていることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PSiP-ピンサー型パラジウム錯体を触媒とする非対称ジボロン合成を実現することができた。また新たに非対称型のPSiN-ピンサー型白金錯体を用いる、芳香族炭化水素のボリル化反応を見出すことができた。これらの成果はピンサー型錯体の独自の反応性を開拓したものとして優れた成果であり、順調に研究は進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

今後は,非対称型のピンサー型錯体の反応性の開拓、ならびに新たにPNNNP型の配位子を用いた金属-金属結合を持つ錯体の合成を目指した研究に重点を置く計画である。後者については配位子の合成法はすでに確立しており、今後各種の金属錯体の合成とその反応性の開拓を行いたい。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Total Synthesis of Englerin A Utilizing Intermolecular [3+2] Cycloaddition Reaction of Platinum-Containing Carbonyl Ylide2016

    • 著者名/発表者名
      Kusama, H.; Tazawa, A.; Ishida, K.; Iwasawa, N.
    • 雑誌名

      Chem. Asian J.

      巻: 11 ページ: 64-67

    • DOI

      10.1002/asia.201500935

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Total Synthesis of Proposed Structure of Yuremamine and All Diastereomers Using [3+2]-Cycloaddition of Platinum-Containing Azomethine Ylide2015

    • 著者名/発表者名
      Ohyama, T.; Uchida, M.; Kusama, H.; Iwasawa, N.
    • 雑誌名

      Chem. Asian J.

      巻: 11 ページ: 1850-1853

    • DOI

      10.1002/asia.201500491

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fluorine-Controlled C–H Borylation of Arenes Catalyzed by PSiN-Pincer Platinum Complex2015

    • 著者名/発表者名
      Takaya, J.; Ito, S.; Nomoto, H.; Saito, N.; Kirai, N.; Iwasawa, N.
    • 雑誌名

      Chem. Commun.

      巻: 51 ページ: 17662-17665

    • DOI

      10.1039/ c5cc07263h

    • 査読あり
  • [学会発表] CO2を用いる炭素-水素結合の直接カルボキシル化反応2016

    • 著者名/発表者名
      岩澤伸治
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
    • 招待講演
  • [学会発表] 高周期14族元素含有ピンサー型配位子をもつ6族金属錯体の合成と反応2016

    • 著者名/発表者名
      永松麻由子、三浦律男、鷹谷絢、岩澤伸治
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] Si-キラルPSiP-ピンサー型パラジウム錯体を触媒とするエナンチオ選択的ヒドロカルボキシル化反応の開発2016

    • 著者名/発表者名
      山田凌輔、伊藤龍好、鷹谷絢、岩澤伸治
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] PGeP-ピンサー型配位子を持つ7族金属カルボニル錯体の可逆な光幾何異性化反応2016

    • 著者名/発表者名
      杉本忠大、下牧克也、村田慧、鷹谷絢、岩澤伸治
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] Total Synthesis of Integrifolin2016

    • 著者名/発表者名
      SHIMOMAKI, Katsuya; KUSAMA, Hiroyuki; IWASAWA, Nobuharu
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] Synthesis, Structure, and Reactivity of Gallium-Iridium Heterobimetallic Complexes Utilizing an N,P-Multidentate Ligand2016

    • 著者名/発表者名
      SAITO, Narumasa; TAKAYA, Jun; IWASAWA, Nobuharu
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] Electrophilic Activation of Aromatic Guest Molecules Utilizing a Macrocyclic Boronic Ester Containing Difluorobenzothiadiazole Moiety2016

    • 著者名/発表者名
      UCHIKURA, Tatsuhiro; ONO, Kosuke; TAKAHASHI, Kohei; IWASAWA, Nobuharu
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] クラウンエーテル部位を有する大環状ボロン酸エステルの合成とそのDiels-Alder反応加速効果2016

    • 著者名/発表者名
      中所亮輔、高橋講平、小野公輔、岩澤伸治
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] PSiN-ピンサー型金属錯体を触媒として用いるアレーンまたはアルケン類のホウ素化反応の開発2016

    • 著者名/発表者名
      伊藤志成、鷹谷絢、岩澤伸治
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] 籠型ボロキシン分子の構築とそのルイス塩基との錯形成に基づく動的構造変換2016

    • 著者名/発表者名
      志茂俊輔、小野公輔、高橋講平、岩澤伸治
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27

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公開日: 2017-01-06  

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