研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H05802
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松永 茂樹 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (50334339)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒 / 不斉触媒 / 多核触媒 / 協奏触媒 / 不斉合成 |
研究実績の概要 |
昨年度までに見いだしていたビナフチルスルホン酸を母骨格とするキラルアニオンと高原子価ロジウム触媒とを組み合わせた触媒系を活用することで炭素-水素結合活性化後の官能基化段階における不斉誘導に成功した。反応機構解析の結果、キラルスルホン酸がプロトンを供与する際に立体選択性が発現していることが示唆された。共同研究成果として論文公表を行った。スピロ骨格を母骨格とするキラルスルホン酸を活用することで、基質適用範囲の拡張にも成功し、抗ウイルス作用等が期待される6-アリールプリンのC-H官能基化における不斉誘導にも成功した。スピロキラルスルホン酸は有機触媒としても有効であることもあわせて報告した。 キラルカルボン酸とコバルト触媒を併用することで、従来報告例のなかったsp3炭素-水素結合の活性化における、エナンチオトピックな二つのメチル基C-H結合の識別に成功した。チオアミド基のアミド化に成功した。コバルト触媒においては、比較的単純なアミノ酸由来のキラルカルボン酸が有効である事を見いだしたが、コバルト触媒の配位子であるシクロペンタジエニル基上に一つt-ブチル基を導入することで高い立体選択性の発現につなげられることが判明した。 ロジウム触媒に対して有効なキラルカルボン酸については、引き続き検討の余地はあるものの、ビナフチル骨格を有するキラルカルボン酸を新たに設計することで、たsp3炭素-水素結合の活性化における不斉誘導が中程度の立体選択性で進行する事を見いだした。最終年度にはさらなる改良を実施し、成果の取りまとめを実施する。 キラル二核ルテニウム触媒については、機能探索、触媒構造解析を順番に実施した。触媒的不斉シクロプロパン化、C-Hアミノ化、ヘテロDiels-Alder反応において既存のロジウム触媒を凌駕する触媒活性を有することを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新学術領域内の共同研究により、ロジウム触媒とキラルスルホン酸の組み合わせた新規触媒を創製することに成功した。本共同研究成果は、Nature Catalysis誌に掲載され、多くの研究者に対して新しいキラルC-H活性化触媒の設計指針を与えるものとなった。また、キラルルテニウム触媒については、触媒回転数が100万回転を超えるなど当初の想定を大きく上回る優れた触媒活性を達成することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで想定以上の成果を得ており、最終年度では、さらに研究を押し進め高難度立体制御を実現する触媒反応の開発を押し進める。キラルルテニウム触媒について、二つのルテニウム金属の価数を確定させ、成果の取りまとめを実施する。複核シッフ塩基触媒については、分子内C-Hアミノ化に特化して最終検討を実施する。さらにロジウム色バウとキラルスルホン酸を組み合わせた触媒については、C-H活性化にとどまらず幅広い反応への適用範囲の拡張を行う。
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