研究実績の概要 |
NHCの電子的および立体的な特徴はNi(CO)n(NHC) におけるCO伸縮振動や分子構造から評価される。そこで、PoxImを用いたニッケルカルボニル錯体Ni(CO)n(PoxIm) (n = 2, 3) を合成した。窒素上にPh基を有する1とNi(cod)2のTHF溶液に対して、N-ホルミルサッカリンとトリエチルアミンとの反応により系中発生させた3当量のCOを反応させた。 その結果、Niに対して1がカルベンとホスホリル基で配位した錯体2が収率98%にて生成した 。錯体2のIRを固体状態にて測定したところ、1882.5, 1975.1 cm-1にCO伸縮振動が観測された。錯体2の31P NMR (C6D6, 22 °C) を測定した結果、68.1 ppmにホスホリル基由来のケミカルシフトが観測された。これは遊離状態の1 (31P 62.0) に比べ低磁場シフトして観測されていることから、ホスホリル基のNiに対する配位が示唆される。一方、1とNi(cod)2のトルエン溶液に対して、過剰量のCOを加えた結果、カルベンのみが配位した錯体3が収率96%にて生成した。錯体3におけるCO伸縮振動は1944.2, 1969.3, 2046.5 cm-1に観測された。また、ホスホリル基由来のケミカルシフトは31P 59.2であり、1に比べて顕著な変化が観測されないことから、ホスホリル基はNiに対して配位していないと考えられる。以上の結果より、適切な反応条件 (COの圧力、溶媒) を選択することで、PoxImの配位形式を変えながらNi(CO)2(PoxIm) およびNi(CO)3(PoxIm)の両方が合成できることを見出した。
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