研究実績の概要 |
1.高分子キラル求核触媒PQXmdppを用いた不斉Steglich転位反応 N-メチルジヒドロピロロピリジル基をペンダントとして有するPQXmdppはオキサゾリルカーボナート(1)のSteglich転位反応において高い触媒活性とエナンチオ選択性を示した。トルエン中-60 °Cにおいて、高収率かつ最高94%eeの高エナンチオ選択性で反応が進行し、転位生成物であるアズラクトン(2)を与えることを見出した。PQXmdppはこれまでに報告された低分子キラル求核触媒と比べて優れた触媒活性を示し、0.1mol%の触媒量においても、高い収率とエナンチオ選択性で生成物を与えた。また、反応終了後にアセトニトリルを加えるだけで容易に触媒回収が可能であり、少なくとも11回の回収、再利用においても触媒活性、エナンチオ選択性の低下は見られなかった。 2. 2,2'-ビピリジニル基をペンダントとするPQXbpyの合成と不斉配位子としての利用 PQX骨格上に2,2'-ビピリジンをペンダントとして有する新たな高分子キラル配位子PQXbpyの合成ルートを確立し、アルケンの銅触媒不斉シクロプロパン化をモデル反応としてその構造最適化を行った。ボロニル基を有するPQXbohに対し、6-ブロモ-2,2'-ビピリジンをパラジウム触媒存在下で反応させることにより、PQXbpyが収率よく得られた。この重合後クロスカップリングにより、様々な置換基をビピリジンペンダント上に有するPQXbpy誘導体を合成した。これらのキラル配位子としての効果を調べるため、ジアゾ醋酸エステルを用いる1,1-ジアリールアルケンの銅触媒シクロプロパン化反応を行ったところ、4',6'-ジメチル-2,2'-ビピリジン-6-イル基をペンダントとするPQXbpyが最も高い不斉収率を示し、-20 °Cでの反応において81%eeでシクロプロパン化生成物を与えた。
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