研究領域 | 太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成 |
研究課題/領域番号 |
15H05813
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
石井 守 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 室長 (20359003)
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研究分担者 |
佐藤 達彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (30354707)
齋藤 享 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 電子航法研究所, 研究員 (40392716)
中田 裕之 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30345011)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙天気 / 衛星帯電 / 電波伝搬 / 人体被ばく |
研究実績の概要 |
太陽活動を主な源とする「宇宙天気」は我々の生活に深く関わっている。特に現在の高度ICT社会は激甚宇宙天気現象に対して脆弱であるが、その対策は不十分なものである。 当研究は宇宙天気のユーザーとの密な情報交換・情報共有のもとに宇宙天気現象が現在の社会に与える影響を定量的に評価し必要な対策を取るためのハザードマップを作成するほか、ユーザーのヒアリングを通じて宇宙天気情報の有用な展開のためのアプリケーション開発を進める。また、宇宙天気のうち太陽・太陽風、磁気圏および電離圏の各領域ごとに開発されているモデル・シミュレーションコードの結合に関する検討を進める。現在までの研究経過は以下のとおりである。 宇宙天気ユーザー協議会を発足し、ユーザーに対して2年間で23回のヒアリングを行いニーズ・シーズマッチングのための情報収集と分析を進めるとともに、以下の活動の基礎資料とした。ハザードマップについては、宇宙天気現象の社会活動に与える影響について定性的な記述の部分を完成させた。電波伝搬シミュレータについては3次元短波伝搬モデルの基礎開発が完了した。電離圏モデルとしてリアルタイム電波伝搬モニタリングモデル開発の道筋をつけた。衛星測位への影響についてはフランスCNESとの共同研究により解決の見通しがついた。テーラーメイド宇宙天気については、静止軌道上の粒子環境の現況マップの開発を完了。モデルの結果と比較検証を進めている。また“みちびき”・“こだま”衛星についての工学モデルの開発を進めている。電力網アラートシステムにおいてはA03班と共同で東京電力の変電設備における誘導電流を計測するための作業を進めた。リアルタイム人体影響予測システムについては航空機の経路上の被ばく量を見積もるプログラムが完成。ウェブインターフェースの検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で進めている各分野での進展状況は以下のとおりである。 (1)研究成果と事業者ニーズ間のギャップ解析:宇宙天気情報の利用者の中でも特に中心となるメンバーによる「宇宙天気ユーザー協議会」を設立し、情報収集を進めた。また研究者側のヒアリングを行い、両者の比較によるニーズ・シーズのギャップ解析を行った。宇宙天気情報のユーザーとして23回のヒアリングを行った。 (2)ユーザーフレンドリなアプリケーション開発:(a) 電波伝搬シミュレータ:3次元短波伝搬モデルの基礎開発が完了、電離圏モデルとして既存のモデルのほか、観測データを基にしたリアルタイム電波伝搬モニタリングモデル開発の道筋をつけた。(b)テーラーメイド宇宙天気:静止軌道上の粒子環境の現況マップの開発を完了。MHDシミュレーションの結果との比較検証を進めている。また、“みちびき”衛星の工学モデルおよび“こだま”衛星の工学モデルの開発を進めている。(c)電力網アラートシステム:A03班と共同で東京電力の変電設備における誘導電流を計測するための作業を進めるとともに、電力会社との議論により電力システムに対する地電流の影響の見積もり方法について検討した。(d)リアルタイム人体影響予測システム:航空機の経路上の被ばく量を見積もるプログラムが完成。ウェブインターフェースの検討を開始した。 (3)ハザードマップ整備:米国等の政府が発行している宇宙天気現象に関する行動計画文書を分析し、我が国としての宇宙天気ハザードマップ構築に向けた検討を進め、構成検討を行い、宇宙天気の社会インパクトについての定性的な記述を完了した。 (4)モデル間結合検討:宇宙天気の各モデルに関する課題を検証するため、研究の現状をレビューする研究会を開催した。米国における類似活動を行う組織CCMCを訪問、現状を視察するとともに意見交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
①研究成果と事業者ニーズ間のギャップ解析:本件についての調査はほぼ終了し、今後はギャップ克服についての検討と評価に入る。結果をA02-04班およびユーザー間で共有し解決の方策作りを進める。 ②ユーザーフレンドリなアプリケーション開発 (a)電波伝搬シミュレータ:短波電波伝播についてWeb上での公開を目指したインターフェースの開発を進めるとともに、より現実的な3次元電離圏モデル中でのシミュレーションを実現する。また、減衰の効果の検討を行うとともに、。実観測結果との比較を行い、シミュレーション結果の評価を行う。(b)テーラーメイド宇宙天気:環境予測モデルおよび衛星評価モデルの開発を進め、統合することに加えて、衛星材料の帯電危険性の評価を検討し、目標達成に向けた活動を進める。(c)電力網アラートシステム:東京電力との共同研究による応答関数の推定を進め、極端現象時に送電網に考え得る直流電流の量を推定し、その危険性について関係者と検討を進めハザードマップに反映させる。(d)リアルタイム人体影響予測システム:平成28年度までに開発した太陽宇宙線に起因する被ばく線量を計算するプログラムに銀河宇宙線の寄与も計算する機能を追加し,個別の宇宙天気現象の際の全球における被ばく線量をリアルタイムで計算可能とする。また、その結果を発信するウェブインターフェースを制作および評価を進める。 ③ハザードマップ整備:宇宙天気極端現象で我が国で生じる可能性のある地磁気・電離圏変動を定量的に推定するとともに、社会インパクトを災害リスクマネジメントの手法を用いて推定し、ハザードマップに反映させる。 ④モデル間結合検討:現状存在するモデルの評価を進め、宇宙天気予報に現状最適と考えられるシステムの検討を進める。
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