計画研究
本計画研究では、爆発に至る太陽面磁場の発達過程から、噴出するプロミネンスの運動、およびそれに伴って発生するコロナ中の衝撃波と質量放出(CME)を全国の関連機関が連携して観測し、電磁流体方程式に基づく数値モデルでこれらを再現することによって、地球を襲う太陽嵐を実時間予測する方法論と、確度の高いフレア発生予測スキームの開発を目指している。H30年度も引き続き、ひので衛星による光球磁場観測、国立天文台のフィラメント磁場観測、京大飛騨天文台のプロミネンス放出速度観測、NICT山川観測所の電波バースト観測、名大惑星間シンチレーション観測システム(IPS)による太陽風の観測を順調に実施したが、太陽活動の低下に伴い太陽嵐現象の発生頻度は低下している。しかしこれまでに蓄積されたデータを用いて、以下のような太陽嵐予報の実用化に向けた研究が進展した。非線形フォースフリー磁場モデルに基づき磁気中性線における磁場の捻れに関連付けられたパラメータが、数時間のリードタイムで大きなフレアの発生予測に有効であることを検証し、予測システムに実装する道筋を明らかにした。また、深層学習によるフレア発生予測システムはNICTにて運用を開始し、IPSデータをCME伝搬モデルに同化することによるCME到達予測、及び電波バーストの自動検出についても予測システムへの実装準備を整えた。観測されたフィラメント放出現象をMHDモデルを用いて再現することにより、CME発生予測に役立ついくつかの知見を得た。2018年8月6~9日には京大において太陽高エネルギー粒子データ解析ワークショップを開催、3名の講師を海外から招き十数人の学生や若手研究者の参加を得て、CMEと太陽高エネルギー粒子発生に関する統計的解析に着手した。
2: おおむね順調に進展している
各施設における観測装置の運用はほぼ順調におこなわれ、太陽活動イベントのデータが蓄積されつつある。太陽活動の低下に伴う太陽嵐イベント頻度の減少は、予想されたことでありやむを得ない。モデリングにおいてはフォースフリー磁場に基づくフレア発生予測につながる成果が上げられており、太陽風・CME数値シミュレーションの開発も予定通りに進められ、宇宙天気予報への実装段階にある。
1.フレアトリガ機構の解明とフレア発生予測スキームの開発従来の経験予測モデルより確度の高いフレア発生予測スキームの実現に向け、①非線形フォースフリー磁場(NLFFF)モデルによる巨大フレア発生予測(κスキーム)の運用に向けた検討と中小フレアへの適用可能性の考察、②NLFFFモデルとMHDシミュレーションによるCME発生予測の検討、③コロナ磁場モデルとMHDシミュレーションの高度化、すなわち非フォースフリーモデル構築、彩層磁場情報の取込み、データ駆動型シミュレーション開発、④シグモイド構造とコロナダイナミクスの前兆現象によるフレア予測可能性検証、を進める。2.太陽嵐による地球軌道上変動のリアルタイム予測地球を襲う太陽嵐の重要度を爆発の発生から数時間以内に確率予測する方法論の開発に向け、①これまでに飛騨天文台で観測されたフィラメント放出約40個イベントの解析からフィラメント放出観測によるCME予測精度の向上度を明確化、②Type-II 電波バースト自動検出によるCME警報システムをNICTで運用開始、③IPSデータ同化SUSANOO-CMEシステムをNICTで運用開始、④SEPモデルとSUSANOO-CMEの結合と検証、⑤流体シミュレーションによるフレア放射スペクトル再現性の向上、を図る。また、第2回太陽高エネルギー粒子データ解析ワークショップを開催し、SEP予測モデルの開発及び人材育成を図る。本計画の成果を国際会議にて紹介するとともに、PSTEP 5年の成果、A01,A03への具体的貢献の達成度を総括し、今後への提言をおこなう。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (24件) (うち国際共著 11件、 査読あり 21件) 学会発表 (43件) (うち国際学会 21件、 招待講演 17件) 図書 (2件) 備考 (5件)
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