研究領域 | 太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成 |
研究課題/領域番号 |
15H05816
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
余田 成男 京都大学, 理学研究科, 教授 (30167027)
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研究分担者 |
櫻井 隆 国立天文台, 太陽天体プラズマ研究部, 教授 (40114491)
今田 晋亮 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (40547965)
宮原 ひろ子 武蔵野美術大学, 造形学部, 准教授 (00532681)
浅井 歩 京都大学, 宇宙総合学研究ユニット, 特定准教授 (50390620)
吉田 康平 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (10636038)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 太陽物理学 / 地球システム / 太陽活動変動 / 宇宙船変動 / 気候変動 |
研究実績の概要 |
国立天文台(三鷹)の赤外スペクトロポラリメータを運用し、次期太陽サイクルの予測に用いる太陽磁場精密データの観測を継続した。また、紫外線放射量の指標となるカルシウムK線画像のデジタル化や、国内観測による黒点相対数、プロミネンスの緯度分布、 大気光強度などのスキャン作業も実施した。 太陽周期予測数値計算グループは、サイクル24の極域磁場をもとに次期太陽サイクルの活動度を予測する5年前予測を試みた。表面磁束輸送モデルの数値計算コードを開発し、ひので、SDO、地上観測データを入力して、太陽極小期の極域磁場を予測し、従来よりも早い段階での次期太陽サイクル予測手法を開発中である。 太陽放射変動グループは、飛騨天文台フレア監視望遠鏡によるHα線画像を用いて、1992~2012年の彩層画像からプラージュ・インデックスの導出を行った。また、データの較正処理や再スキャンの作業を行って、特に、分光スリット幅のムラや、スリットスキャン中の天候変化などによる、筋状模様の除去プログラムを開発して、較正を行った。 宇宙線変動グループは、マウンダー極小期周辺に発生した宇宙線強度異常増加イベントの年代を決定するため、加速器質量分析計で炭素14濃度の高精度分析を行った。また、小氷期について屋久杉、伊勢スギの酸素同位体比の測定を行い、中部日本および屋久島での降水環境の復元を行った。さらに、中国華東師範大学と、トラバーチン堆積物中の宇宙線生成核種・ベリリウム10による宇宙線強度変動の復元に向けての共同研究を開始した。 地球システムモデル計算グループでは、気象研究所地球システムモデルの大気化学過程に高エネルギー粒子降下に伴うHOx、NOx生成を行うパラメタリゼーションを導入し、化学気候モデル相互比較実験にてソーラープロトンの効果に関する再現実験を行った。高精度雲モデルの高度化として太陽高エネルギー粒子の影響を取り込むための取り組みを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽磁場精密観測グループの研究計画はおおむね順調に進展している。磁場観測装置の較正を扱った論文はSolar Physics誌に投稿し改訂中であるが、カルシウムK線画像のデジタル化などは予定より早く完了した。 太陽周期予測数値計算グループでは、表面磁束輸送モデルの数値計算コードを開発し、テストをおこなった。本格的な研究は2016年度に行う。また、観測データから計算に必要な物理量(差動回転、子午面循環流など)を導出する基本的なツールの作成・整備をおこなった。 太陽放射変動グループは、データの較正処理や再スキャンなど、乾板データからプラージュ・インデックスを導出するのに必要な作業を予定通り推進している。また、宇宙線変動グループも計画どおりに進捗している。 地球システムモデル計算グループは、気象研究所地球システムモデルに高エネルギー粒子に伴うNOx、HOx生成過程を導入して、標準的な化学気候モデル相互比較実験で、ソーラープロトンの効果を取り込んだ過去再現実験を行った。また、高精度雲モデルに雲電荷過程の効果を取り込むための取り組みを開始した。
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今後の研究の推進方策 |
太陽磁場精密観測グループは、平成28年度には三鷹の赤外ポラリメータのデータ処理法を確立する。カルシウムK線画像についてはフィルム、乾板の特性曲線を求めて光量値に変換し、平成29年度に予定している解析の準備とする。 太陽周期予測数値計算グループはNSO Kitt Peak・SOHO/MDIデータをインプットとして、サイクル21~23の磁場データについて表面磁場輸送モデルを適用し、すでに得られている極磁場の再現を試みる。 太陽放射変動グループは、デジタル化及び較正が終了した太陽彩層の画像(カルシウムK線)の乾板データを用いて、プラージュ・インデックスを導出し、過去の太陽紫外線放射量およびその変動を推定する。 宇宙線変動グループは次年度も引き続き、炭素14の高精度分析と酸素同位体比の分析を継続する。また、アイスコア中のベリリウム10の単年分析に着手する。さらに、兵庫県立大学の島伸一郎准教授らとともに日中共同研究を開始し、宇宙線の電荷が雲に及ぼす影響を数値シミュレーションにより明らかにしていく。 地球システムモデル計算グループは、CMIP6準拠の相互比較実験を開始する。高エネルギー粒子の効果の感度実験を行うとともに、高精度雲モデルの高度化を継続する。また、太陽活動顕著イベントの短期アンサンブル実験を行う。さらに、太陽活動影響が大きい最終氷期最大期を中心とした古気候実験を行う。
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