計画研究
本計画研究では領域全体の目的である「核-マントル相互作用と共進化」の解明に向けて,地球内部の不均質構造や化学組成,元素循環プロセスや分化過程を明らかにするため,「核-マントル物質の構造と物性」を研究している.これまでの研究では,(1)地球内部に不均質構造をもたらすマグマの化学組成とその物性の解明,(2)地震学的に分かっている不均質構造を物質科学的に説明するための,地球深部物質の弾性波速度測定,(3)核に軽元素(水素,炭素,硫黄などの揮発性元素)を運び込む地球深部物質の構造と物性の研究,(4)核の軽元素の種類と量を特定するための核構成物質の物性測定などについて研究成果を挙げ,後に示すように雑誌論文や国内外の学会で発表した.地球深部で発生するマグマについては,ダイヤモンドアンビルセル(DAC)とCO2レーザー加熱技術開発を組み合わせてモデル系での融解実験を行い,マグマの化学組成に制約を与えた.メルト物性については,KEKの放射光ビームラインNE5CとNE7AにおいてX線吸収法による測定システムを立ち上げ,高温高圧力下での密度測定に着手した.メルトの構造解析についてはJ-PARC MLFでの高圧中性子回折実験を行うため,高圧セル部品加工のための3D加工機や実験試料合成のための超高温真空雰囲気加熱装置を整備した.ケイ酸塩ガラスを使った中性子回折実験を開始した.地球深部の揮発性元素については,水素を含む高圧相および窒素を含む系での高温高圧実験を行い,下部マントルの含水量や窒素の挙動を考察した.揮発性元素を含む高圧相の弾性波速度測定を高圧下で行い,地球深部の地震波速度異常を議論した.核を構成する鉄合金融体については,高温高圧下での物性に基づいて核形成のタイムスケールについて制約を与えることが出来た.また,鉄合金の弾性波速度を測定し,核に含まれる軽元素を議論した.
2: おおむね順調に進展している
これまでの2年間で,各メンバーの所属機関には当初計画どおりに装置が導入され,いずれも順調に立ち上がっている.下部マントル条件でのマントル物質の溶融実験については,ダイヤモンドアンビルセル(DAC)とCO2レーザー加熱技術開発を組み合わせて,下部マントル物質として最も重要なMgO (periclase) -MgSiO3 (bridgmanite) 2成分系の溶融関係を115万気圧下まで明らかにした.メルト物性については,KEKの放射光ビームラインNE5CとNE7AにおいてX線吸収法による測定システムを立ち上げ,高温高圧力下での密度測定に着手した.また,メルトの構造解析については高圧セル部品加工のための3D加工機や実験試料合成のための超高温真空雰囲気加熱装置を整備した.揮発性元素循環に関しては,特に水素と窒素の地球深部での存在状態と挙動を探る研究を進めている.レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル(LHDAC)を用いて,ケイ酸塩-軽元素系の高温高圧実験を進めている.水素に関しては水素化した鉄が分配に与える影響や中性子回折による反応追跡を進めている.窒素に関しては含水Bridgmaniteへの取り込み挙動を調べ,全地球における窒素のbudgetに関する議論を進めつつある.地球深部物質の弾性波速度測定については,Alに富んだ含水及び無水ブリッジマナイトの弾性特性を明らかにしてきている.地球中心核を構成する鉄合金の物性については,鉄合金融体の常圧下における弾性特性測定を目的とし,物性(密度・音速)測定用の雰囲気制御炉を設置した.この炉を用いて,1600℃までの急速加熱を実施し,鉄合金試料の溶融を観察した.以上のように,この2年間は主に新たな実験システムの構築に取り組んできた.いずれも概ね予定通りに立ち上がっており,順調に実験成果が得られつつある.
本計画研究(A01-2,構造物性班)では,放射光や中性子といった量子ビームを主に使用し,地球深部環境である高温高圧下において核-マントル物質の構造と物性に関する実験的研究を行う.地球深部で発生するマグマについては,本研究によりその化学組成に制約が与えられた.今後は深部マグマに関する物性測定と構造解析を進める.地球深部に軽元素(水素,炭素,酸素,窒素,硫黄などの揮発性元素)を運ぶ物質については,含水アルミノケイ酸塩,硫酸塩,水酸化物などの高圧相への相転移や構造解析,さらに状態方程式などの物性を明らかにしてきた.今後は複数の軽元素を含む系での実験や,酸化還元雰囲気など環境を制御した実験を進める.弾性波速度測定については,研究分担者である村上元彦教授がH29年度からスイス工科大学に転出することになり,科研費受給資格を喪失するため分担者を辞することとなった.そこで高輝度光科学研究センターの肥後祐司研究員に分担者として加わって頂き,村上氏が担当していた内容を引き継いで頂くこととなった.分担者が村上氏から肥後氏に交代するが,これまでの方針どおりに実験を推進できるので研究計画への影響は全くない.今後は地震波観測と比較して下部マントルの化学組成に制約を与える.外核を構成する鉄合金メルトの物性については,今年度導入した新型電気炉を使用して本格的な測定を開始する.この2年間は主に新たな実験システムの構築に取り組んできた.いずれも概ね予定通りに立ち上がっており,これから実験成果を蓄積する.また,計画研究各班とは合同班会議を開催するなど連携を進め,核-マントル相互作用と共進化の解明に向けた共同研究を加速する.
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (33件) (うち国際共著 9件、 査読あり 32件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (107件) (うち国際学会 65件、 招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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