計画研究
平成27年度は立ち上げ期と考え、下記のような技術開発を中心とした研究に着手し一定の成果があげられた。1.ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)合成技術の改良による、安定した大型・高品質NPD合成法の最適化を目指し、地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)の超大型マルチアンビル高圧合成装置BOTCHAN-6000の調整と、合成プロセスの見直しを行った。この結果5割以上の確率で高品質NPDの合成が可能になった。2.ダイヤモンドアンビル装置の1対のアンビルとして平板状NPDを用いた超高圧発生試験を行うとともに、ボロンをドープしたCVDダイヤモンド電極を用い、電気伝導度測定を可能にする新たなシステムを開発し、30GPa領域でのルーチン的測定が可能になった。また同様の加圧装置を用いて、加熱システムのテストを開始した。一方で、SPring-8におけるNPD-DACを用いた高温高圧下での放射光X線吸収実験を本格的に開始した。また、この分野で先行しているESRFとGRC間の学術交流協定を締結することにより連携を強め、共同研究を推進するための体制を整備した。更に大型NPDを用いた中性子実験用高圧装置のデザイン改良を行い、10GPa領域での圧力発生試験を試みた。3.焼結ダイヤモンド(SD)アンビルを用いたマルチアンビル装置(SD-MA)による、100GPa領域で1300K程度の高温発生試験、また60GPa領域で2300K領域の高温高圧発生技術を開発した。また、新しく開発されたバインダレス超硬合金アンビルを導入し、これを用いたマルチアンビル装置により、放射光その場観察実験に基づく圧力発生試験を行い、常温下で50GPa程度の超硬合金アンビルを用いた最高発生圧力を確認した。以上のような技術開発に基づき下部マントル物質の相関係や密度変化、Feの電子構造変化などについての実験を開始した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は計画研究実施期間が半年余りと短かったが、上記のような取組がなされ順調に研究が開始された。上記のうち1.のNPD合成に関してはもう少し安定した合成技術の確立が必要であるが、超大型マルチアンビル高圧合成装置BOTCHAN-6000の変形によるものと思われるブローアウトが一定発生しており、プレス自体のオーバーホールが必要な可能性がある。一方2.のボロンをドープしたCVDダイヤモンドを電極として用いた電気伝導度測定に関しては、新たな技術としてプレスリリースを行うとともに論文投稿中である。また3.の超硬合金による50GPa領域の発生は国際的にも注目を集めており、国際誌に投稿論文がそのまま掲載された。このように、本計画研究は当初の予定どおり順調に研究がすすめられた。
今後も計画通り1.高品質大型NPDの大量合成とそのアンビルへの加工に基づく新しい超高圧実験への供与、2.NPDを用いた様々なダイヤモンドアンビル装置技術の開発とそれを用いた多様な超高圧実験技術の開発、3.超硬合金、SD、NPDを用いたマルチアンビル実験技術の開発を主要な研究課題とし、その成果を他の計画研究(とりわけ高圧実験及び化学分析関連の計画研究)に開示するとともに実験指導を行い、マントル~核領域の精密実験に貢献するとともに、自らもこれらに関連した研究テーマの推進を図る予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 7件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 9件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
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