計画研究
本年度は以下の点について技術開発をすすめるとともに、それを用いた地球深部の物質科学的研究を行った。1)グラッシーカーボンを出発物質として用いたNPD合成を様々な温度条件下で行い、数nm~数10nmの領域で粒径を制御したNPDの合成技術を確立した。2)NPDアンビルを用いた2段加圧ダイヤモンドアンビル装置(dsNPD-DAC)により、最大420GPaの超高圧発生を達成した。一方でNPDを用いたDACに対する外熱加熱システムを開発し、1000K程度の高温発生を可能にした。3)NPD-DACを用いた高温高圧下での放射光X線吸収実験技術の開発をすすめ、既にいくつかの成果が上がっている。4)大型NPD-DACを用いた中性子実験用高圧装置の開発により、本年度の目標を大幅に上回る40GPa領域の圧力発生を達成した。5)NPDアンビルを用いたマルチアンビル装置(NPD-MA)により90GPa領域の圧力発生に成功した。6)SDアンビルを用いたマルチアンビル装置(SD-MA)による、65GPa領域の圧力下での2300K領域での安定な高温発生技術を確立した。また比較的低温ではあるが120GPa領域の圧力発生に成功し、高温発生・高圧発生ともに従来の限界を突破した。7)WCアンビルを用いたマルチアンビル装置(WD-MA)による40-50GPa領域での高温発生試験を行ったが、高温下での大幅な圧力低下が認められた。以上の成果に加えて、当初の予定になかったが、NPDを用いた回転DACの開発、B-ドープダイヤモンドをコーティングしたNPD-DACによる高圧下電気伝導度測定装置の開発、NPDの炭素同位体標準物質としての活用など、とりわけNPDの活用において新たな成果があがっている。また、上記の技術開発に基づき、下部マントル領域での多様な組成のブリッジマナイトの相関係、沈み込む地殻関連物質としてホーランダイトやFeOOHの相関係、またMgOなどの下部マントル鉱物やコンドライトの融解と軽元素の元素分配などに関連した重要な成果があがっている。
1: 当初の計画以上に進展している
NPDを利用した2段式DACにおいて420GPa(圧力スケールにより最大620GPa)という世界トップレベルの超高圧発生に成功するとともに、NPD-MAにおいても従来の50GPaを大幅に引き上げ90GPaの発生に成功した。また大型NPD-DACにおいても当初の目標である20GPaを大幅に上回る40GPaの発生に成功し、中性子回折実験への応用も試みられている。更にSD-MAにおいても120GPaを超える圧力発生に成功し、約2年ぶりに世界記録の更新がなされ、その他の技術においても、本年度の目標をほぼ達成している。一方で、当初の計画にはなかったが、NPDの特徴を生かした新たな装置として、他の計画研究のメンバーとの共同により回転DAC装置の開発が行われ、核-マントル境界に対応する130GPa領域でのせん断変形実験が可能になった。また、NPDを他の計画研究に提供することにより炭素同位体測定のための標準物質としての有用性が確認されるなど、NPDは他の計画研究との連携強化においても重要な役割を果たしている。更にNPDは領域外の研究者との共同研究も促進しており、従来からのヨーロッパ放射光施設(ESRF)を中心とするグループ等による高圧下X線吸収実験に加え、新たに物材研究機構との共同研究によるB-ドープダイヤモンド技術とNPDを組み合わせた装置開発により、超高圧下での超伝導測定のルーチン化を可能にした。またアルゴンヌ研の先進放射光施設(APS)においては、NPDを利用した超硬物質の圧縮強度測定技術の開発がすすめられ、興味深い結果が得られている。このように本計画研究の取り組みは、領域外の共同研究における新たな技術開発にも大きな影響を与えている。
本年度は昨年度の成果を更に発展させ、主に以下の点についての技術開発をすすめるとともに、下部マントル~核領域の高圧物性及び地球化学的研究をすすめる予定である。グラッシーカーボンから合成した様々な粒径を持つNPDに対し、その弾性や圧縮強度などの機械的特性を明らかにし、多様な超高圧装置に最適な「オーダーメイドNPD」の確立を目指す。このようにして合成したNPDアンビルを用いたダイヤモンドアンビル装置(NPD-DAC)による500GPaを超える領域の超高圧発生を目指すとともに、より高温で安定した外熱及び内熱加熱システムの開発を行う。また回転NPD-DAC及びNPD-D-DIA装置を用い、高温高圧下でのせん断及び圧縮強度測定に関する実験装置及び手法の開発を進める。一方で、昨年度達成された大型NPD-DACを用いた中性子実験用高圧装置により、40GPa領域での高圧中性子回折実験を行うとともに、更に高圧発生を目指した技術開発を行う。NPDアンビルを用いたマルチアンビル装置(NPD-MA)に関しては、100GPaを超える領域の圧力発生試験を行うとともに、6-8-2加圧のNPD-MAによる圧力発生試験を平行してすすめる。一方で、昨年度に引き続きSDアンビルを用いたマルチアンビル装置(SD-MA)による、70GPa領域の圧力下における2300-2500K領域の高温発生、及び最下部マントル領域である130GPaの圧力発生試験を行う。また、WCアンビルを用いたマルチアンビル装置(WD-MA)に関しては、40-50GPa領域での高温発生試験を目指した高圧セルの開発を行うとともに、WCアンビルを用いた25-30GPa領域での3000K程度の高温安定発生技術の開発を行う。以上のような技術開発を基盤とし、核-マントル相互作用と共進化に関する本計画研究独自の、また他の計画研究と連携した研究課題の推進、とりわけ下部マントル条件下での相関係及び融解関係や元素分配等の精密決定を行う
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (23件) (うち国際共著 12件、 査読あり 23件、 オープンアクセス 10件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (51件) (うち国際学会 23件、 招待講演 9件) 備考 (1件)
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