計画研究
核-マントル相互作用や地球の初期進化の化学的解明のために,計画研究申請書のロードマップにも記したように,超高精度の同位体分析,微小領域の同位体分析技術,および,高温高圧実験技術の研究開発に重きを置いた。地球深部条件下での同位体分配実験,およびその試料分析の際に必要となる標準試料合成のための高温高圧発生装置として,比較的大容量の試料が合成可能なピストンシリンダーを導入した。また,超高圧高温下の同位体の挙動を実験的に明らかにするためには,ダイアモンドアンビルセルによる温度勾配の無い高温加熱手法の開発が必要不可欠である。そこで均質加熱が可能な外部抵抗加熱,内部抵抗加熱法の発生可能温度を引き上げるべく,それぞれLaCrO3ヒーター,ボロン添加ダイアモンドヒーターの導入を行った。また,化学的目的に特化した高圧その場イメージング手法の開発(ラミノグラフィーの導入)を行った。高温高圧実験生成物の同位体分析のためにNanoSIMSを用いた極微小領域における各種元素,同位体を精密に分析する手法の開発に着手した。それと共に,下部マントル起源と識別するヘリウム同位体の分析方法について検討した。さらに,核に濃集しやすく,核-マントル相互作用による分別が期待できるOs,W,Pb同位体の超高精度分析手順の開発に着手し,質量分析計の分析条件の最適化を進めた。超高精度Os同位体分析には,負イオン表面電離型質量分析法を,W,Pb同位体比測定には,様々な条件の検討後に,多検出器型ICP質量分析計を用いることとした。
2: おおむね順調に進展している
核-マントル境界での化学反応による同位体分別を検出するため,極微小領域における各種元素を精密に分析する手法の開発に着手した。今年度は,鉛の他に水素や塩素といった軽元素の同位体にも着目し,NanoSIMSによる分析方法を検討した。高圧実験における元素,同位体分析のための標準試料合成に利用するピストンシリンダーを3月に導入し,次年度に実験条件の最適化を行い,標準物質の作成に着手する予定である。核-マントル相互作用の痕跡を天然試料に見出すための実験室を準備した。また,超高精度同位体分析のための表面電離型質量分析計,多重検出器型ICP質量分析計の整備を進めた。さらに,核-マントル相互作用を記録していると考えられる地球深部起源の岩石,例えば,マントル上昇流による火成活動と考えられている巨大火山岩岩石区であるオントンジャワ海台の岩石試料,ホットスポット火成活動による海洋島玄武岩などの岩石試料の入手を完了した。さらに,地球の初期進化を知るための40億年前のカナダAcasta変成岩の岩石試料を入手した,
ダイアモンドアンビル装置を用いた高温高圧実験において,均質な資料加熱が可能になり,また,高温高圧実験生成物の物性等をその場で観察する技術にさらなる進展が見られた。同位体班が前期に注力した微小試料測定技術と組み合わせることで,今後新たな展開がみられると考えられる。マントル構成鉱物間における水素同位体分配について,温度に加え圧力,構造の違いが与える影響について探るために,分配実験を行う。NanoSIMSを用いた極微小領域における各種元素を精密に分析する方法の開発を進める。また,数十億年前の岩石試料やアクセスが容易でない地域で採取される岩石試料は貴重であり,その量も限られている。それら試料の超高精度の同位体分析を行うには,ブランクを下げる必要がある。平成28年度に低ブランクの分析手法の開発を行う。また,多検出器型ICP質量分析計の最適化を行い,超高精度のW同位体比分析を可能にする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 5件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 12件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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