研究領域 | 核-マントルの相互作用と共進化~統合的地球深部科学の創成~ |
研究課題/領域番号 |
15H05831
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
小木曽 哲 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (60359172)
三部 賢治 東京大学, 地震研究所, 助教 (10372426)
鎌田 誠司 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (30611793)
舘野 繁彦 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 特任准教授 (30572903)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 核-マントル / 軽元素 / 強親鉄性元素 / 元素分配 / 同位体分別 |
研究実績の概要 |
昨年度新潟大学に購入した質量分析計の試料導入部に硫黄同位体専用のシステムを本年度構築した。そのためパイロラザーとガスクロマトグラフを合わせたシステムを設置し、試験的な分析を行った。本研究領域の主な目的である核―マントル間の元素分配と軽元素の同位体分別係数を見積るために高温・高圧条件下で実験を行った。以下に代表的な成果を述べる。 FeS系と石榴石間の高温高圧下での反応実験を50~70 GPa、4200 K程度で行った結果Fe-FeS系と珪酸塩は共に融けた状態で反応を起こした。また鉄系に硫黄が存在することで硫黄が存在しない系で行なわれた先行研究と比較するとケイ素が核物質中へ入りにくいことが分かった。現在の核とマントル中に存在するケイ素や酸素フガシティを再現するためには、ケイ素と硫黄はそれぞれ2.1~7.4 wt%、6.1~2.3 wt%必要であることが分かった。またこれら元素分配実験をより精密な温度制御下で行うために、ボロンドープダイアモンドを発熱体として用いた内部抵抗加熱式ダイアモンドアンビルセルを開発しており、現在までに3700Kまでの高温発生を可能にしている。さらにFeS系の出発物質を使用した高温・高圧下での実験を行い、超高圧下の硫化鉄とメルトの硫黄同位体分析を試験的にそれぞれ行った。 初期地球のマグマオーシャンでの最終固結に伴う揮発性物質の挙動を理解するため,高温高圧下で揮発性物質を含むマグマの性質を調べる実験的研究を行った。 マントル物質の強親鉄性元素分配を明らかにするために天然カンラン岩のTEM-EDSによる微小領域観察を行った。その結果、白金属元素がカーボナタイト質メルトによって移動することが明らかとなった。 以上の結果により、下部マントルや核―マントル境界付近の元素の挙動やリザーバーの存在、さらに元素分配や同位体の分別に関する重要な制約を与えることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画研究の重要な目的である、高温・高圧下での元素分配・同位体分別係数を明らかにするために、微小領域の高精度の分析が不可欠である。目的を達成するために導入した最新型の質量分析機に微小領域試料導入システムを構築した。 試料の量を徐々にへらし、下部マントルや核―マントル境界の温度圧力条件下の実験生成物質の測定を目指す予定であり、おおむね計画通りに進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究方針としては、さまざまな出発物質を使用した高温・高圧下での元素分配・同位体分別実験を行い、核―マントル境界までの温度・圧力条件の変化による分別定数、他元素の二次的効果、液相-固相間または金属メルト-珪酸塩メルト間(液相不混和)の元素分配・同位体分別係数を見積もる。さらに、水とマグマの間の第2臨界端点付近での希ガスの挙動を調べる実験を行うため,外熱式ダイヤモンドアンビルに希ガスを封入する装置の開発を行う。マントルの温度圧力条件は川井型マルチアンビル装置、ピストンシリンダー装置を使用し、より高圧の実験はレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いて行う。実験生成物の電子顕微鏡観察 、軽元素同位体分析、EPMA分析、集束イオンビーム加工(FIB)による断面のTEM観察、二次イオン質量分析機(SIMS)、LA-ICPMSによる微量元素精密分析を用いて行うことで、上記の目的を達成する。また、天然のマントルペリドタイトの微細構造観察や微小領域の化学組成分析などを行い、地球内部での揮発性物質の挙動を実際の地球深部の岩石から読み取ることをこころみる。最終的に実験で得られた成果を元に、理論計算班(A04-1)・同位体班(A02-1)と共同で第一原理電子状態計算法を用いた元素・同位体シミュレーションを行うことによって新たな地球深部化学進化モデルを構築する。
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