研究領域 | 核-マントルの相互作用と共進化~統合的地球深部科学の創成~ |
研究課題/領域番号 |
15H05832
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
田中 聡 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球深部ダイナミクス研究分野, 分野長代理 (60281961)
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研究分担者 |
川勝 均 東京大学, 地震研究所, 教授 (60242153)
ヘルフリック ジョージ 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任教授 (80747163)
金嶋 聰 九州大学, 理学研究院, 教授 (80202018)
大滝 壽樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (00356643)
清水 久芳 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70302619)
竹内 希 東京大学, 地震研究所, 准教授 (90313048)
河合 研志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20432007)
ハウザー クリスティーン 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任助教 (20723737)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 地震 / 核ーマントル |
研究実績の概要 |
今年度の研究成果は以下の通りである。いずれも論文として公表された。1. 有限歪モデルに基づく熱膨張率の圧力依存性を検討した結果、地球核の圧力条件下における金属では、従来の見積より約2.5倍大きくなることがわかった。(Helffrich) 2. 新たに開発した地震波減衰推定手法を用い、海底地震観測で得られたデータに適用した結果、海洋リソスフェアと海洋アセノスフェアにおける減衰構造の周波数依存性に明確な違いがあることを明らかにした。(竹内)3. 中央アメリカ直下のマントル最下部D”領域の3次元S波速度構造を推定し、沈み込んだフェラロン・プレートの行方を明らかにした。このような冷たいプレートが核の表面に達することによって、外核の対流運動に影響を与える可能性を指摘した。(河合)4. 2種類のコア・フェーズの走時差を用いて、アラスカ直下マントル最下部に3%程度のP波速度構造不均質が存在することを明らかにした。これにより内核異方性の見積に大きな影響を与えてきたコア・フェーズの観測データが、マントル構造の不均質によって強いバイアスを受けていることがわかった。(川勝、竹内)5. 世界中の群列地震観測データを外核最上部の地震波速度構造を再検討した。外核最上部のP波速度は標準モデルより最大で0.03km/s遅く、低速度層の厚さは従来の値(400km)より厚い450kmと求められた。(金嶋)6. トンガ・フィジー島直下の下部マントル中央部に地震波散乱体を見出した。興味深いことに、その散乱体は太平洋大規模S波低速度領域が盛り上がりの上部に集中している。(金嶋)7. 理論的考察より、下部マントル中央部の地震波散乱体は、初期地球に核から離溶した二酸化ケイ素である可能性を見出した。(Helffrich)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に研究成果が得られている。特に、中米直下のマントル最下部まで沈み込んだプレートによって核表面が冷却される、核から放出された二酸化ケイ素がマントルの上昇流に運ばれて地震波散乱体を形成する、などの仮説の提唱が特筆される。タイにおける地震観測については、半年に一度、計2回データ回収を行い、約1年分の地震データを収集した。代表的な地震波形を用いてマントル最下部の構造に関する解析を行い、太平洋大規模S波低速度領域の西端にあるニューギニア島直下のマントル底部に地震波速度低下率が数%以上にも及ぶ領域の存在を検出した。オーストラリア、インド、中国から地震波データの提供を受け、マントル最下部の構造について解析を実施した。これらの国による地震データは、タイの観測網によって調査できる範囲を大いに拡大できることがわかった。地震波形インバージョン法の改良を進める中で、3次元地震波速度構造における震源過程の影響を評価した。外核最下部の地震波速度構造に関しては、オースラリア直下を重点的に解析し、論文を準備した。下部マントルの電気伝導度解析において、局所地磁気ジャークの予備的解析を行い、電気伝導度の地域性を見出した。今後、さらにデータを増やしてその存在を検証する。A04理論計算班や東京工業大学地球生命研究所と共同で、地殻から核の構造とダイナミクスに関する国際ワークショップを開催した。A02地球化学班と合同研究集会を開いて情報交換を行い、核とマントルの共進化についての議論を深めた。
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今後の研究の推進方策 |
中間評価の指摘に対応するため、古地磁気学と磁場解析の研究者を研究分担者に招き、データ解析を推進するためのポスドクを補充するなど、研究体制を強化する。タイにおける地震観測に関しては、30年度の夏季にデータ回収を一回行い、30年度末までに観測網を撤収して観測を終了する。その後データ集約と最終的なデータの品質確認を行い、研究分担者の地震データ解析担当に提供する。タイにおける地震観測の終了後、最終年度である31年度に今後の展開を議論するためにタイで国際ワークショップを開催することを検討しており、そのための打ち合わせを行う。タイだけでなく、オーストラリア、中国、台湾、アメリカ、他多くの国との国際共同研究を推進する。 既存、新規のデータを用いて、以下のような地震学的・地球電磁気学的解析テーマに取り組む。1. 西太平洋のマントル最下部の地震波速度構造(不均質・異方性)の解明。2. マントル内のVp/Vs比の地域性の解明。3. 全マントル減衰構造。4. 中央アメリカ直下のマントル遷移層の地震学的構造。5. 内核・外核の構造解析。6. 地磁気ジャークによる下部マントルの電気伝導度構造。7. 古地磁気記録による低頻度逆転期の古地磁気変動。8. 地磁気データによる外核の流れ場の推定。 他の班との連携を深めるために高圧実験、地球化学、理論計算など他の班と合同研究集会を開く。異なる班どうしで意見・情報交換を促進して、核―マントルの相互作用と共進化について解明を進める。
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