研究領域 | 核-マントルの相互作用と共進化~統合的地球深部科学の創成~ |
研究課題/領域番号 |
15H05834
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
土屋 卓久 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (70403863)
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研究分担者 |
土屋 旬 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (00527608)
出倉 春彦 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 講師 (90700146)
中川 貴司 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 主任研究員 (50396941)
宮腰 剛広 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球深部ダイナミクス研究分野, 主任研究員 (60435807)
高橋 太 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20467012)
ハーンルンド ジョン 東京工業大学, 地球生命研究所, 教授 (30723712)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / マントル対流計算 / 電磁流体計算 / ダイナミクスモデリング |
研究実績の概要 |
地球深部の熱化学特性およびダイナミクスに関して研究を開始し、以下のような成果を得た。①非調和格子動力学法に基づく第一原理格子熱伝導率計算手法の高精度化を行い、下部マントル全域にわたる温度・圧力条件下で主要構成鉱物端成分(ペリクレース、(ポスト)ブリッジマナイト)の格子熱伝導率を第一原理的に決定することに成功した。またフォノン輸送特性に及ぼす鉄固溶効果について予備計算を実施し、計算モデルの妥当性を検証した。 ②昨年度作成した熱力学積分第一原理分子動力学法を用いた自由エネルギー計算法を、地球内部の主要放射性熱源元素であるカリウムのケイ酸塩-鉄軽元素合金液体間の分配に適用した。その結果、核-マントル境界に至る温度圧力条件において、鉄液体が軽元素を含まない場合或いは硫黄やシリコンを含む場合にはカリウムはケイ酸塩メルトに分配されるのに対し、鉄液体が酸素を含む場合には液体鉄に分配されることが分かった。 ③主要地殻物質(玄武岩、花崗岩等)の地球内部での密度を第一原理的に求め、得られた結果に基づき2成分マントル対流計算を行った。その結果、地殻物質が-2%程度の密度差の場合は地殻物質は下降流とともに下部マントルにまで沈降するが長期的には安定化はしないこと、+2~+3%程度の場合は下部マントルにおいて平均的に高濃度となり地震学的に観測される巨大低速度域と整合的な構造を形成すること、+5%程度の場合は核-マントル境界において安定成層を形成し地球化学から要請される始原物質リザーバを説明できることが分かった。また技術開発班と連携し新たな高密度含水層を発見した。 ④外核最上部の安定成層の存在による地球磁場への影響を、熱組成対流を同時に考慮した数値ダイナモシミュレーションを用いて調べた結果、安定成層の存在は地場の高次成分を遮蔽する効果があり、観測される磁場の微細構造を説明できない可能性が高いことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定通り、下部マントル主要鉱物の熱弾性特性への鉄固溶効果等の定量計算を実行することができた。さらに膨大な計算結果を取りまとめてデータベース化し、それに基づき予定していたポスト・ペロブスカイト相平衡に対する鉄固溶効果について論文にまとめ投稿することができた。また下部マントル鉱物及び核物質の熱伝導特性を計算する手法を確立することに成功し、計算手法及び端成分の結果を論文にまとめるとともにに鉄固溶効果など多成分系への展開に着手することができた。 第一原理計算から得られた物性値を用いた連続体シミューションも予定通り開始し、沈み込んだ地殻物質の密度差と下部マントル不均質の成長との関連性など、本領域の研究を進める上でカギとなる重要な知見の取得に早くも成功した。計画研究内連携のみならず計画研究間連携も当初計画以上に活発に展開し、特に新しい高圧安定含水鉱物の安定性や下部マントル・核物質の熱伝導率に関する計画研究A01-1,3との連携、放射性元素を含む微量元素挙動に関するA02-1,2との連携、地球深部物質の熱弾性特性に関するA03-1との連携について具体的な成果の論文化が順次進んでおり、当初計画以上の進展がみられている。 その他、日本地球惑星科学連合西田賞の受賞1件が内定した。
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今後の研究の推進方策 |
マントル深部温度圧力条件における主要地球深部物質の熱力学的安定性、熱弾性特性、熱伝導率、原子拡散係数の計算、超高温超高圧下での微量元素の元素分配や同位体分別の計算をさらに推進する。 他の計画研究と連携して、実験データの理論サポートをさらに展開するとともに高温高圧物性データの高精度化を行う。得られた定量物性特性を連続体シミュレーションに反映させたより現実的な地球深部ダイナミクスモデリングを一層推進する。 核-マントル物質の熱伝導特性やレオロジー特性の相違に着目した高精度数値解析を通して、核-マントル境界、内核-外核境界など地球深部の主要な境界層領域のダイナミクス、特に不均質性の正体の解明を行うとともに、それらの生成・進化機構について新たな理論モデルを提示する。他の計画研究と共同して得られたモデルの改良を重ねることにより、モデルの汎用性を高める。
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