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2018 年度 実績報告書

有用な生物機能多環式中分子の高効率合成

計画研究

研究領域反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製
研究課題/領域番号 15H05841
研究機関早稲田大学

研究代表者

中田 雅久  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50198131)

研究期間 (年度) 2015-06-29 – 2020-03-31
キーワード有機化学 / 生物活性 / 反応集積化 / 中分子 / 不斉触媒
研究実績の概要

コチレニンA の不斉全合成においては、エチル(E)-4-ヘキサノエート(1)とメシチルメチルスルホンのジアニオンの反応、および生成したβーケトスルホンへのジアゾ基の導入がワンポットで行えることを見出した。このことにより、触媒的不斉分子内シクロプロパン化(CAIMCP)の基質(2)を(1)から77%で得た。また、CAIMCPおよび生成したシクロプロパンのシアン化ナトリウムとの反応はワンポットで行えることを見出し、(2)から所望のニトリルを81%で得た。以上の反応集積化によりコチレニンA のA環の合成を4工程で達成できた。パラジウムを用いた8員炭素環形成の触媒化にも成功した。
ブルセアンチンの不斉全合成においては、ベンジル位に三級水酸基とスチリル基を有するp-クレゾール誘導体の酸化的脱芳香族化を行うと、スチリル基がアキシャル位メチル基との1,3-ジアキシャル反発に抗して効率的に1,2-転位し、スチリル基の結合する全炭素四級不斉中心を構築できた。本転位反応を適用する基質はトランス縮環したオクタヒドロフェナントレン骨格をもつ必要があるが、パラジウム触媒によるシリルエノールエーテルの分子内アリール化およびヘック反応がトランス縮環したオクタヒドロフェナントレン誘導体を立体選択的に与えることを見出した。
ケラマフィジンBの不斉全合成においては、短寿命活性種を活用するフロー合成によるα-ジアゾ-β-オキソイミドの直截的合成法の確立に成功した。
アチサン型ジテルペンの合成研究においては、アミノチオアミドを有機不斉触媒とするホルミルニトロアルケンの分子内マイケル反応が全炭素四級不斉中心の形成を伴って高エナンチオかつ高立体選択的に生成物を与えることを見出した。生成物から調製した化合物の酸化的脱芳香族化反応-[4+2]環化反応によりアチサン型ジテルペンの炭素骨格を立体選択的に構築できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

コチレニンAの不斉全合成においては、各フラグメントの合成ルートを確立し、反応集積化による合成効率化も達成した。合成したフラグメントの結合による収束的合成により、アグリコン部分の量的供給は行える状況になっている。調製した固定化不斉触媒を用いたCAIMPは溶液系における結果を再現できたが、反応速度が遅いためフロー反応への移行は難しいことが分かった。そこで、フロー反応へ展開でき、A環のより効率的な合成に繋がる触媒的不斉向山-マイケル反応の開発を検討中である。C環の合成に関しては、アシルラジカル環化の収率向上が難しいことが分かったため、パラジウム触媒を用いた新規環化反応を検討中である。
ブルセアンチンの不斉全合成においてはAu(I)による連続環化反応を経由する骨格形成は、二つ目の全炭素四級不斉中心の構築が難しいことが分かった。スチリル基の1,2-転位による全炭素四級不斉中心の構築はその問題を解決するブレークするといえる。パラジウム触媒によるシリルエノールエーテルの分子内アリール化およびヘック反応の光学活性な基質の合成を検討している。
ケラマフィジンBの不斉全合成においては、分子内ディールス-アルダー反応を行うための基質であるα-アルキリデン-β-オキソイミドの合成を検討中である。各種カップリング反応を用いた合成においては除去できない不純物の混入が避けられないため、スルホンを用いた合成法を検討中である。
アチサン型ジテルペンの合成研究においては、不斉有機触媒を用いるホルミルニトロアルケンの分子内マイケル反応が連続する三級不斉中心の構築にも有効であることを見出したので、パラジウム触媒反応によるトランス縮環構造構築法と組み合わせることにより、得られた生成物からアチサン骨格構築への展開を検討している。

今後の研究の推進方策

コチレニンAの不斉全合成においては、触媒的不斉向山-マイケル反応を開発し、それを活用するA環のより効率的な合成を目指す。向山-マイケル反応においては、反応点と用いる不斉ルイス酸の距離が離れているので、反応を高エナンチオ、高立体選択的にするには不斉ルイス酸の設計が鍵である。当研究室で開発した触媒的不斉野崎-桧山反応に有効なカルバゾールリガンドは、各種金属と錯体を形成する。そのエクアトリアル位に空きの配座をもつ錯体は、分子モデリングの結果、向山-マイケル反応の不斉触媒として有効と予想されたので、検討する。C環の合成に関しては、パラジウム触媒を用いたチオエステルの新規環化反応を検討する。予備的な知見として、アルキルパラジウムが生成する反応において、還元的脱離による炭素―硫黄結合の生成を確認しているので、その知見を活かして検討を進める。
ブルセアンチンの不斉全合成においては、見出したパラジウム触媒によるシリルエノールエーテルのトランス選択的分子内アリール化およびヘック反応の基質適用範囲を探る。具体的にはジメチル基の代わりにケタール基を導入した基質の反応を検討する。光学活性な基質の合成は、触媒的不斉野崎-桧山反応を活用する。スチリル基はヒドロキシメチル基に変換可能であるため、見出した1,2-転位を起点とするブルセアンチンの不斉全合成を目指す。
ケラマフィジンBの不斉全合成においては、メチルフェニルスルホンのカップリングとフロー合成を活用してα-アルキリデン-β-オキソイミドの合成を行い、分子内ディールス-アルダー反応を検討する。
アチサン型ジテルペンの合成研究においては、生体機能中分子の構造多様性に対応するために、別ルートとして、触媒的不斉野崎-桧山反応を活用して得た化合物に全炭素四級不斉中心を立体選択的に導入した後、立体選択的[4+2]付加環化によるアチサン骨格の構築を検討する。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Preparation of a Chiral Building Block by an Organocatalytic Asymmetric Intramolecular Michael Reaction2019

    • 著者名/発表者名
      Sato, Y.; Hosoya,Y.; Kobayashi, I.; Adachi, K.; Nakada, M.
    • 雑誌名

      Asian J. Org. Chem.

      巻: 8 ページ: in press

    • DOI

      10.1002/ajoc.201900178

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Research on Unique Masked ortho-Benzoquinone, Monohemiaminal: Synthesis and Reactions2018

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto, Y.; Saito, E.; Nakamura, A.; Nakada, M.
    • 雑誌名

      Heterocycles

      巻: 97 ページ: 232-252

    • DOI

      10.3987/COM-17-S(T)11

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Efficient Preparation of Cyclic α-Alkylidene β-Oxo Imides by Using a Flow Microreactor System2018

    • 著者名/発表者名
      Komuro, K.; Nagaki, A.; Shimoda, H.; Uwamori, M.; Yoshida, J.-i.; Nakada, M.
    • 雑誌名

      Synlett

      巻: 29 ページ: 1989-1994

    • DOI

      10.1055/s-0037-1610228

    • 査読あり
  • [学会発表] Cotylenin A糖部位の合成2019

    • 著者名/発表者名
      長田 龍之助,上森 理弘,中田 雅久
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] First Enantioselective Total Synthesis of Cotylenin A2019

    • 著者名/発表者名
      Uwamori; Ryunosuke Osada; Ryoji Sugiyama; Masahisa Nakada
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] 不斉有機触媒反応を経由するアチサン型ジテルペン骨格の高立体選択的構築2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤 佑介,細谷 洋介,関田 寛子,足立 恭平,小林 一平,中田 雅久
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] Cotylenin E の収束的不斉全合成研究2018

    • 著者名/発表者名
      上森理弘,長田龍之助,杉山亮司,足立まりあ,中田雅久
    • 学会等名
      第62回日本薬学会関東支部大会
  • [学会発表] コチレニンAの不斉全合成2018

    • 著者名/発表者名
      上森理弘,長田龍之助,杉山亮司,中田雅久
    • 学会等名
      第60回天然有機化合物討論会
  • [学会発表] Cotylenin E の不斉全合成研究2018

    • 著者名/発表者名
      上森理弘,長田龍之助,杉山亮司,足立まりあ,中田雅久
    • 学会等名
      第8回 CSJ 化学フェスタ2018
  • [学会発表] コチレニンAの収束的不斉全合成2018

    • 著者名/発表者名
      上森理弘,長田龍之助,杉山亮司,中田雅久
    • 学会等名
      第44回反応と合成の進歩シンポジウム
  • [学会発表] コチレニンAの不斉全合成2018

    • 著者名/発表者名
      上森理弘,長田龍之助,杉山亮司,足立まりあ,中田雅久
    • 学会等名
      第114回有機合成化学シンポジウム
  • [学会発表] First Enantioselective Total Synthesis of Cotylenin A2018

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Uwamori, Ryunosuke Osada, Ryoji Sugiyama, Masahisa Nakada
    • 学会等名
      The 14th International Kyoto Conference on New Aspects of Organic Chemistry
    • 国際学会
  • [学会発表] First Enantioselective Total Synthesis of Cotylenin A2018

    • 著者名/発表者名
      Masahisa Nakada
    • 学会等名
      The 4th International Symposium of Middle Molecular Strategy
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] “Enantioselective Total Synthesis of the Antitumor Polycyclic Natural Products, FR182877 and Taxol” in Cutting-Edge Organic Synthesis and Chemical Biology of Bioactive Molecules - The Shape of Organic Synthesis to Come2019

    • 著者名/発表者名
      Masahisa Nakada
    • 総ページ数
      29
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-981-13-6243-9
  • [図書] CSJカレントレビュー27天然有機化合物の全合成ーパラジウム触媒反応による8員環形成を鍵としたタキソールの形式不斉全合成ー2018

    • 著者名/発表者名
      中田雅久
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      化学同人
    • ISBN
      9784759813876
  • [備考] 中田雅久研究室

    • URL

      http://www.chem.waseda.ac.jp/nakada/

  • [備考] 早稲田大学 先進理工学部 化学・生命化学科

    • URL

      http://www.chem.waseda.ac.jp/ja/

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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