研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
15H05844
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
野上 敏材 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60402963)
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研究分担者 |
伊藤 敏幸 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50193503)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 生理活性 / 有機化学 / 自動合成 / 電解合成 |
研究実績の概要 |
1年目の本年度はTMG-キトトリオマイシンの全合成と大量合成を目標に研究に取り組んで来た。このうち、全合成に成功し共同研究者の協力を得て、酵素阻害活性評価を行うことも出来た。その結果、文献値に近いIC50を示すことが分かったが、大量合成を実施するにあたり、いくつかの課題が浮かび上がってきた。特に、アジド糖を用いたグリコシル化反応における立体選択性は完全ではないため、望みの異性体を得るためには煩雑なカラムクロマトによる分離精製作業が必要であり、大量合成に向けて最優先で解決すべき課題と位置付けた。そこで、本年度の後半において集中的に検討を行った結果、二種類の支持電解質を混合した反応条件下で電解グリコシル化を実施することで、95%以上のβ選択性で目的の二糖を得ることに成功した。この反応系は2位にアジド基を有する糖供与体のほか、2位水酸基がベンジル保護された糖供与体へも拡張可能であり、隣接基関与を用いないグリコシル化反応の立体制御法として一般化出来る可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていたTMG-キトトリオマイシンの大量合成実施には至らなかったものの、大量合成に向けて解決が必要な立体選択性の問題について、ある程度解決の見込みが出てきたのは大きな進歩である。また、我々が見出した混合支持塩系は隣接基関与に依存しないグリコシル化反応の立体選択性制御法として一般化出来る可能性を秘めており、今後の標的糖鎖合成において強力な手法となると期待される。従って、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1. さらなる選択性向上に向けた検討: 混合支持塩による選択性向上を実用的レベルにまで高めるため、大量合成に適した反応条件の探索を図るとともに、糖鎖ビルディングブロックの保護基についても最適化を図る。 2. 四糖前駆体の自動合成の条件検討とTMG-キトトリオマイシンの大量合成: 四糖前駆体の自動合成を立体選択的に行うためには、アジド糖を用いたグリコシル化段階と続くフタロイル基による隣接基関与を用いるグリコシル化段階の両方を混合支持電解質系で実施する。混合支持塩系を用いるとフタロイル基を用いた場合に収率が著しく低下することが予備的な検討により明らかになった。Tf2Nアニオンがグリコシルトリフラート中間体の安定性に大きな影響を与えていることが予想されていることから、グリコシルトリフラートを安定化するような添加剤について検討を行う予定である。 3. TMG-キトトリオマイシン誘導体合成: トリメチルアンモニウム塩構造を内部に有するTMG-キトトリオマイシンの誘導体を合成するためのアジド糖の糖鎖ビルディングブロックを開発する。このとき、アジド基を有するオリゴ糖の糖供与体を用いても混合支持塩による立体制御効果が発現するか興味が持たれる。 4. 混合支持塩系の基質拡張: 本系を基質拡張することが出来れば、隣接基関与に依存しない糖鎖合成が可能になると期待され、オリゴ糖合成に与えるインパクは極めて大きい。特に糖タンパク質の糖鎖構造として重要なN結合型糖鎖合成に必要なβ-マンノシル化に応用したい。
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