計画研究
アンメット・メディカル・ニーズに応える新薬のリードとして中分子化合物が非常に期待されているが、これまで供給の困難さから医薬品としての中分子の使用は極めて限定的であった。そこで、中分子機能性化合物の大量供給法を開発するために、(1)環境調和型触媒反応の空間的集積化(マイクロフロー合成)と、(2)化学選択性の触媒制御法を基盤とする中分子化合物(ハイブリッド医薬品)の直接合成法の開発を行い、最終的にそれらを融合することで(3)中分子化合物の実用的生産法を開発することを目的として研究を行っている。平成27年度は、研究実施計画にのっとり、(A)幾つかの触媒系の反応機構解析を基盤とした反応条件の最適化と高活性触媒の創製、(B)担持型触媒の開発とマイクロフロー合成システムへの展開、(C)マイクロ波マイクロフローシステムの検討を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
(A)当研究室で開発した、Rh-Phebox触媒によるケチミンの不斉アルキニル化反応の反応機構解析を、反応速度論解析や計算化学などを駆使して行い、その検討過程で、真の触媒活性種の同定に成功し、別途調整した活性種を触媒として用いることで、触媒活性の向上と基質一般性の拡大に成功した(J. Am. Chem. Soc誌に発表)。また、エステル交換反応の反応機構解析から二核金属錯体が真の活性種であることを見出し、含窒素複素環からなる新規多座配位子による高活性亜鉛触媒の開発に成功し(第二世代亜鉛触媒、Green Chem.誌に発表)、さらに、固相担持型の第三世代亜鉛触媒の開発にも成功した(Adv. Synth. Catal.誌に発表)。(B)第三世代亜鉛触媒である固相担持型亜鉛触媒をカラムにパッキンングし、九大院薬のグリーンファルマ研究所内で開発を行っているフロー合成装置を用いて、エステル化反応のフロー系への適応を検討したところ、反応は速やかに進行し、これまで数時間以上の反応時間を要していた触媒反応を、10分以内に完結することに成功した(論文投稿準備中)。(C)先に開発したヒドラジンを求核剤とするアミド結合切断反応の安全性向上と加速化を目的とし、マイクロ波マイクロフローシステムの検討を行い、反応条件の最適化によって、より温和な条件で反応を進行させることが可能となり、また連続運転を行うことで、大量合成も可能となった。以上の研究成果に加え、新規な化学選択性の触媒制御法の開発にも成功しているため、本研究課題は「当初の計画以上に進展している」と判断した。
平成27年度に行った研究を元に、今後は、領域内の共同研究を推し進め、生物活性天然物、ペプチド、糖、核酸などの多官能基含有化合物を基質に用いて触媒開発の検討を行うことを計画している。また、現在開発中のマイクロフローシステムは、従来フロー反応には不向きとされていた反応をフロー系に組み込むことを可能とするシステムであり、その効果も実証されてきていることから、さらに様々な反応に適応し、幾つかの反応を連続フロー化することで、中分子化合物の実用的生産法の検討を行うことを計画している。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (32件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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