(1) カゴ型トリエフェノキシ三座配位子を付した新規アルミニウム錯体を合成し、これが糖類の縮合反応に対して高い触媒活性を示した。グリコシル化において、立体選択的に二糖を合成することは創薬の観点から極めて重要であるが、従来は煩雑な反応条件の設定が必要であり、また選択性は決して高いものではなかった。本課題で合成したアルミニウム錯体は、世界で初めて室温で立体選択的(SN2型)に二糖を合成する初めての系を実現した。選択性は90%を超え、実用性に高い期待が寄せられる。トリフェノキシ配位子のオルト位に臭素原子を置換させることが重要で、立体的な要因と電子的な要因が同時に作用していると考えている。フェニル置換の場合は全く反応が進行しないことから、オルト置換基の反応への高い影響が示唆され、今後の精密制御において重要なチューニングファクターとなることが判明した。 (2) ホウ素のカゴ型トリエフェノキシ三座錯体を上記の(1)の反応に用いたところ、縮合は進行するものの選択性は全く発現しなかった。一方、フッ化糖を用いた二糖合成において、触媒的な反応が進行することがわかった。この反応はアルミニウム錯体では全く進行しないことから、ホウ素とアルミニウムの特徴がそれぞれ活かされた糖鎖合成を達成したことは価値が高い。 (3) ルイス酸として、ホウ素・アルミニウムよりも高周期のガリウムを用いた新しい異性化反応を検討した。同一分子内にブタトリエン部位を二箇所近傍に有する分子を世界で初めて合成し、その物性を明らかにした。この化合物にガリウムを触媒量添加したところ、ペンタレン骨格を有する縮合多環式化合物が一気に高収率で生成した。他のルイス酸で起こらない反応形式であり、ルイス酸とブタトリエンの高い親和性が原因であると考えられる。本系で得られた新規物性を有する化合物群は、中分子への導入が容易で、創薬への展開が期待される。
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