計画研究
本研究では、強相関トポロジカル現象にかかわる以下の研究活動を開始した。【1】 カイラル超伝導現象の実証: Sr2RuO4にて、ジョゼフソン電流からカイラル超伝導ドメイン運動を示す結果を得た。URu2Si2にて、カイラル超伝導揺らぎによる巨大熱磁気応答の理解を深めた。トポロジカルエッジ状態の電流雑音について、計画研究C01と共同研究を進めた。【2】 奇周波数超伝導状態の実証: 多バンド超伝導体での奇周波数状態の理論を発表した。強磁性金属/超伝導体Sr2RuO4近接接合で、スピン三重項対の強磁性体の侵入を観測した。【3】 マヨラナ準粒子の実証に向けた実験:スピン三重項超伝導体の微小リングでの半整数量子化磁束や、重い電子系超伝導人工超格子のエッジ状態の観測を目指す研究を進めた。これに必要な走査型微細加工装置を導入した。【4】 ワイル半金属・ワイル型トポロジカル超伝導体の探索: アンチペロブスカイト酸化物、ウラン系超伝導体で、ワイル半金属やトポロジカル超伝導状態の探索を進めた。0.1ケルビンまでの超伝導探索に有効な交流磁化測定装置を開発した。コバルトや鉄のヒ素化合物についてもディラック電子はじめトポロジカル相を探索して超伝導や磁性の研究を行った。ワイル半金属での歪によるカイラル磁気効果の理論を発表した。層状コバルト酸化物の負の磁気抵抗が、トポロジカル現象とのアナロジーから理解できることを論文発表した。【5】 モット絶縁体でのトポロジカル相の探索:ハニカム格子のイリジウム酸化物やルテニウム酸化物で、トポロジカル・スピン状態を探索した。後者ではスピン・ダイマーの液体・固体転移の研究を進めた。パイロクロア格子の酸化物では、磁気モノポールで記述できる励起状態の遍歴性を示した。【6】 9月にA01班内の研究協力体制構築のための研究会を京都大学で開催し、他班との共同研究も進めた。
2: おおむね順調に進展している
当初計画の各テーマについて順調に研究を開始している。装置購入に関しては、経費の採択充足率を踏まえて、若干の見直しをしたが、その見直し計画に沿って装置の導入を果たし、研究を進めている。
本年度に着手した各テーマの研究を継続発展させるとともに、H28年度は公募研究に採択された研究者との連携を強力に推進する。特に超流動ヘリウムの研究者との交流・連携も含めて、「トポロジカル量子相転移の制御」の研究を進める。様々なトポロジカル相について、4d・5d 遷移金属酸化物へのキャリアドープや圧力効果、重い電子系人工超格子の厚み変化などのパラメター制御を駆使することで、トポロジカル相の安定化や量子相転移に対する電子相関の役割を明らかにする。採択時にコメントいただいた「トポロジーを基軸とする新たな観点から新しい物質や物理が創出されるのか」という質問に対しては、実験と理論との連携により、実際すでに成果が出ており、新学術領域で結びついた強力な連携関係を生かして今後はさらに飛躍的な発展を目指す。
すべて 2105 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 10件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 14件、 招待講演 14件) 備考 (2件)
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