研究実績の概要 |
松野班とはショウジョウバエの後腸の捻転メカニズムに関して共同研究を行っている.後腸は単層の細胞シートからなる筒状の構造をしている.周方向には約16個の細胞が並び,それと直行する方向へは約29個細胞が敷き詰められている.従って約450個の細胞から後腸はできていることになる.松野らの報告によれば,後腸はBasal・Apicalの区別を持ち,捻転前にApical面の細胞は特定の方向へ傾いている.ところが捻転後はその傾きが解消される方向へ,形態形成が起こる.この相関関係が腸管全体の捻転の因果関係となっていることを示すために,いくつかの研究グループと数理モデルを用いて計算を行ってきた(Taniguchi et al, Science, 2011, Inaki et al, eLIFE, 2018).これらの研究では細胞を2次元のバーテックダイナミクスモデルを用いて表現し,主にApical側の細胞の形をモデルに取り込むことで,腸管全体の捻転を再現することに成功している.一方で,実際の腸管の個々の細胞はApico-Basal軸の方向へ薄っぺらい構造しているのではなく,かなり分厚い構造となっていることが本研究から示唆されている.従って,腸管も肉厚の構造であることがわかっている.このような肉厚の構造において,内側のApical面だけの形態の変化だけで,果たして本当に腸管全体を捻転させるほどの力を生み出すことができるかどうかが新たな疑問として提案された.そこで,この現象を再現すべく,3Dのバーテックダイナミクスモデルを用いた相互的に検証可能な数理モデルの構築を行ってきた.モデルはほぼ完成し,国内外の主要な学会(National center for Biological Sciencesの研究報告会,生物物理学会,応用数学合同研究集会等)で研究発表を行った.
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