研究実績の概要 |
ある種の生物に現れる体表面の2次元パターンのような,領域の区域分けを対象とした現象であれば,既存の数理モデルを用いることによって,しばらくは数理的な研究を行うことが可能であるが,3Dの形態形成を研究する場合では,上記のような領域の区域分け問題ではなく,領域自体の構成を行っているため,問題は遥かに複雑であり,これらのモデルを単に延長しただけでは限界がある.そこで,3Dの形態形成を研究する上では,そのパターンや形を数学的に表現する方法を持つことが非常に重要となる.またこの際,構築した表現方法の妥当性は,基本的には実験的研究でのみ評価できるため,単に形式的に形の表現方法を模索するだけでなく,実験系研究者と融合研究できるような方法論の構築を目指すことも肝要である.このような経緯から,本研究グループでは,複数の実験研究者とのコラボ研究を通して「3次元形態を表現する数学的基盤の構築」を目指し研究を行った. 研究の結果,細胞をパーティクルで表現した集団的細胞運動の実験的・数理的研究[M. Akiyama et al, D.G.D., 2017],カブトムシ角の形態形成に関する実験的・数理的研究[K. Matsuda et al, Sci. Rep., 2017],Phase Field法を用いた多細胞の形態形成モデルの数理的研究[M. Akiyama et al, Phy. Bio., 2018],in vitro系の上皮シートのパターン形成に関する実験的・数理的研究[S. Ishida-Ishihara, M. Akiyama et al, J. Cell Sci. 2020],ショウジョウバエ中腸の左右性形成機構の実験的・数理的研究[D. shin et al, Development,2021]など分野横断的かつ,多数の対象に対する共同研究が生まれ,この取り組みの中で,いくつかの新しい数学モデルが提案された.さらに,これらの数学モデルの一部のモデルでは,数理的な解析が行われ,現象の発現機序の一端が解明された.
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