研究領域 | 生物の3D形態を構築するロジック |
研究課題/領域番号 |
15H05860
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 健郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30209639)
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研究分担者 |
杉田 修啓 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20532104)
田村 篤敬 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (30394836)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 力学解析 / 組織・細胞 / 発生・形態形成 / 生物・生体工学 |
研究実績の概要 |
発生途中の胚内部の応力分布を明らかにすることを目指して5年間に亙る研究を進めている.推定には2種類の方法を用いている.第1は切断法である.内部に局所的に引張とその反作用としての圧縮が作用した物体があった場合,これを力の作用方向と垂直な断面で切断すると,引張力の作用していた部分は陥没し,圧縮力の作用していた部分では突出する.この切断面の凹凸分布とスティフネス分布を調べ,計算機解析と組合わせることで,断面を平面に戻すのに必要な応力分布を求めると,これが胚内部の応力分布と見なせる.この方法は組織がある程度固くなってきている尾芽胚期の胚に用いている.第2は刺入法である.当初は内部に染料を満たした直径50μm程度のマイクロピペットを胚に刺入し,染料を排出しつつ針を抜去し,胚内に染料の微小カラムを形成させ,その形状を凍結胚のシリアルセクションから求める方法を用いていたが,染料カラムが認識できなくなる場合が多かったため,直径約50μmのポリプロピレンモノフィラメントを刺入・抜去し,形成された孔の形状を刺入軸を含む断面で切断して観察する方法に変更した. 今年度は,切断法に関しては,胚の膨潤を抑えつつ透明化する条件を見出すことに成功し,胚内部の腹部組織,脊索,神経管などの組織別に3次元形態を求めることができた.現在これらの形状を基に有限要素モデルの作成を進めている.刺入法に関しては,ステージ10-13の原腸胚期の動物極で刺入実験を行い.刺入孔の大きさがステージ10から11に進むにつれて一旦減少し,その後増加することから胚表面の張力もステージ11で一旦低下しまた増加する可能性が示唆された.このような変化はアクトミオシン系を抑制すると生じなかったことから,張力の増加・減少はアクトミオシン系で生じることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
胚内部の力学環境の定量的推定に関しては,切断法と刺入法の2種の方法による胚内部のひずみ分布の評価が可能になりつつあり,胚の透明化という新たな手法により胚内部の3次元構造のモデル化も進んでおり,当初の計画以上の進展も見られるが,胚内の収縮関連タンパクならびに各種発生制御因子の可視化については以前手つかずの状況にあるため.
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今後の研究の推進方策 |
胚内部の3次元的な力学環境の推定を優先し,発生段階による変化を明らかにすることに重点を置くことにする.胚内の収縮関連タンパクならびに各種発生制御因子の可視化については,余力に応じて特徴的な時期の特徴的な断面について取り組む.
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