| 研究領域 | 生物の３Ｄ形態を構築するロジック |
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| 研究課題/領域番号 |
15H05861
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| 研究機関 | 京都大学 |
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研究代表者 |
井上 康博 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (80442929)
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| 研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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| キーワード | 生物物理学 / 計算力学 / 数理モデル / 形態形成 / シミュレーション |
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| 研究実績の概要 |
器官・組織の３Ｄ形態形成における普遍的な力学原理を明らかにすることを目的とし、上皮シートの折りたたみを基本変形によって理解することを目指している。上皮シートが立体的な組織に変形するためには、組織の面外への変形（面外変形）が必要不可欠であることから、面外変形に、どのような力学条件が必要であり、その力学条件は細胞のどのような活動によって実現可能であるかを明らかにする必要がある。
昨年度に引き続き、頂端収縮の細胞配置に関するプレパターンが存在する場合の上皮組織の折り畳みについて、研究を深化させ、面外変形方向の決定における力学原理について、査読付き英文誌に発表した。
また、プレパターンが存在しない場合についても、成長する上皮組織に自発的な折り畳みが生じる際に現れる皺の配向性（以下、パターン）が、どのような細胞活動により形成されうるのか、３Dバーテックスシミュレーションにより検討を行った。シミュレーションにより、上皮組織に形成された折り畳みの間隔（波長）の解析結果から、折り畳みは、座屈として捉えることができる力学的現象であると考えられた。そこで、折り畳みのパターンの決定には、上皮シートに生じる力場の異方性が重要であると考えられた。異方性をもたらす細胞活動として、平面内細胞極性によって生じうる細胞分裂軸の配向が考えられたため、細胞分裂軸の配向性をシミュレーションに考慮することで、形成された折り畳みのパターンを解析した。その結果、細胞分裂軸（分裂後の娘細胞の配置方向）に垂直に、折り畳みの皺が形成されることがわかった。このことから、折り畳みのパターンの決定には、細胞分裂軸の配向性が重要である可能性が示唆された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頂端収縮する細胞配置に関するプレパターンが存在する場合の上皮組織の変形について、面外変形の方向決定の力学原理を明らかにし、査読付き英文誌に公表した。さらに、プレパターンが存在しない場合についても、複雑な折り畳み構造に現れるパターンが細胞分裂軸の配向によって形成される可能性を示唆することができた。これらにより、本年度の研究計画を達成することができた。さらに、実験系班員との共同研究、領域外の実験系研究者との共同研究についても順調に成果が出ており、査読付き英文誌に共著発表している。
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| 今後の研究の推進方策 |
付属肢の成虫原基に見られる実際のマクロな折り畳み構造の形成原理に迫るため、平面形状からの折り畳みではなく、管状や円盤状を初期条件としたシミュレーションに適用できるよう、３Dバーテックスモデルを進化させる。これにより、曲面による不安定化を考慮した、より実際の発生過程に則した折り畳みのシミュレーションを多細胞力学動態に基づき解析することができる。実際の発生現象に応用することで、組織変形には力学的に基本となる変形モードが存在し、それを生み出す力学的な条件には生物種を超えた共通性があることが推測できると期待される。
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