研究領域 | 生物の3D形態を構築するロジック |
研究課題/領域番号 |
15H05864
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
近藤 滋 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10252503)
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研究分担者 |
後藤 寛貴 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任助教 (60737899)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | CTスキャン / 形態形成 / カブトムシ / ツノゼミ / 原基 |
研究実績の概要 |
論文:昨年度の主な実績である「カブトムシの折り畳み構造の計算機内における再現」と「折り畳みパターンが3D形状をコードしていることの証明」の論文が、Sci. Rep.に掲載された。この論文は、当科学ジャーナルで当該年に出版された約6000論文の中で、アクセス数16位になり、ウエブサイト内で表彰されている。 実績: カブトムシの角の3D形態形成の過程は、折り畳みの展開による「物理的過程」と原基に折り畳みを作っていく「生物学的過程」の2つにわけられる。平成29年度は生物学的過程に関して理解が進み、2つの重要な発見があった。一つ目は、折り畳み構造が、マクロな折り畳みとミクロな皺の2つにわけられ、それぞれの制御が独立であること、である。これは、ダクサスなどの関連遺伝子のRNAiの結果、これらの遺伝子が、マクロな構造のみを乱し、ミクロな皺構造には影響を与えない事から発見された。2つ目は、ミクロの皺については、皺ができる前に、アクチンフィラメントの集積がアピカル面に観察されることから、皺に先行してプレパターンが存在することが示唆されたことである。この結果をMOD誌に投稿予定である。 ツノゼミに関しては、11月に近藤を含む3名でコスタリカに滞在し、ヨツコブツノゼミとヨコツノツノゼミの幼虫を各80,200個体収集した。採集された個体のCTデータおよび、連続切片によるヘルメット原基の成長過程を調べている。羽化直前の原基の3D形態から、折り畳みがランダムな場所と方向が整っている場所があることが解っており、現在、その意義について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在2本目の論文を投稿中であり、また、今後に進むべき方向性も見えているため、おおむね順調に推移していると考えている。カブトムシの3D形態形成原理に関しては、後半の、物理学的な過程に関しては、おおよそ理解ができており、期限内に解明できると考えている。前半の生物学的な過程に関しては、非モデル動物であるため、分子生物学的実験制約が大きく、分子的な詳細までは解明できないが、原理の概略に関しては、理解に到達できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
カブトムシに関しては、各部分の折り畳みが3D形態に与える影響を調べるソフトを製作中であり、それができれば、折り畳みと3D形態の関係の概要が理解できると予想している。これに関しては、来年度で達成できるだろう。生物学的な過程に関しては、現在、折り畳みに異常をもたらす遺伝子をRNAiでスクリーニング中であり、その結果によって、進む方向が変わるかもしれない。 ツノゼミに関しては、本年度に採集したサンプルの解析を進める。カブトムシと比較してかなり小さいツノゼミの場合、キーになるのは解像度であり、現在、より詳細に形態を解析できるサンプル調整法を試行錯誤している。
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