計画研究
論文:昨年度の主な実績である「Anisotropy of cell division and epithelial sheet bending via apical constriction shape the complex folding pattern of beetle horn primordia.」の論文が、Mech Dev. 2018に掲載された。研究実績:カブトムシの角の3D形態形成の過程は、折り畳みの展開による「物理的過程」と原基に折り畳みを作っていく「生物学的過程」の2つにわけられる。平成30年度は物理的過程に関して理解が進んだ。計算機内に再現した原基の折り畳み構造に対して、任意の場所の折り畳みを消す操作ができるシミュレーションソフトを開発し、それを使って、それぞれの領域にある折り畳み(皺)と3D形態の間の関係を明らかにした。特に、重要な発見は、4本の突起を作るキャップ部分と、柄の部分を構成するスターク部分では、皺の深さ、細胞シートの剛性等が明らかに異なり、それらの違いが、最終的な折り畳みパターン形成に重要な役割を果たしていることが解ったことである。この結果は、現在論文にまとめており、近々に投稿予定である。また、RNAiスクリーニングで、外殻と原基の接着に関与するdumpy遺伝子が、角形成に重要であることが解り、これにより、外殻との接着点の位置が、原基の形態に重要な役割を果たすことが示唆された。今後、この点を中心にして、生物学的過程の解析を進めていく。ツノゼミ幼虫の体内における原基の成長過程を調べていたところ、意外な事実が判明した。折り畳みができる以前に、一度、原基の細胞シートが収縮し、その時点で、折りたたみなしに、大まかな形態ができていることが解ったのである。これは、カブトムシの蛹から成虫の変態に近い。現在その意義と仕組みについて解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
カブトムシの原基構造の物理的な仕組みに関しては、今年度までの解析でほぼ理解に達したと考えている。生物学的過程に関しては、もともと、ショウジョウバエで行われているような詳細な分子レベルの解析は目的としておらず、概念的なモデルを構築できるところまでを目的としていたので、そのレベルでの理解には、あと1年あれば到達できると予想する。ツノゼミに関しては、折り畳みが形を作るのではなく、収縮過程で大まかな形態ができるという意外な結果に落ち着きそうであるが、その原理は、基本的にはカブトムシ原基におけるマクロ形態を作る原理と酷似しているため、引き続き、カブトムシとの比較をしつつ研究を進めるスタイルは有効である。
最終年度は、カブトムシの角に関しては、生物学的過程の解析に集中する。具体的には、RNAiスクリーニングで得られた遺伝子による折り畳み変化と、それに起因する3D形態変化の関係を調べ、任意の角形態を作るためには、どのような組み合わせ(強さ)でRNAiを行えばよいかを調べていく。ツノゼミに関しては、サンプル数が足りないため、今年度も採集(10月)に行くが、それまでに、外殻との位置特異的な接着に依存する数理モデルの構築を行いたい。CTの観察からは、原基の細胞シートが内部、および外部からけん引されているように見える構造が見えており、その位置関係がモデルの推定と一致するかを調べる。研究機関終了前には、ヘルメットの形態形成を説明するモデルと実験的な証拠を提示できると考えている。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件) 備考 (2件)
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