研究領域 | 非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解 |
研究課題/領域番号 |
15H05875
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
飛松 省三 九州大学, 医学研究院, 教授 (40164008)
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研究分担者 |
松橋 眞生 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40456885)
麻生 俊彦 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (50397543)
小池 耕彦 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (30540611)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 神経振動 / 非侵襲的脳刺激法 / 高次脳機能 / 広域ネットワーク解析 |
研究実績の概要 |
「目的」先端的脳機能計測によるヒューマンネーチャーの解明である。これを達成するために、1) 認知と非侵襲的脳刺激による神経揺らぎの生理学的意義の解明、2) 高次脳機能の広域ネットワーク解明、の2つのテーマにおいて実験系を組み研究を行う。 「研究方法・計画」用いた手法は、脳磁図(MEG)、誘発電位、脳刺激法などである。プロジェクトの3年目であるため、複数のプロジェクトを実行に移しながら、研究成果が少しずつ出てきた。課題負荷中の神経ゆらぎをネットワーク解析し、機能的結合度から高次脳機能との関連を検討した。また、安静時・課題負荷時の神経揺らぎの生理学的意義と磁気(TMS)・電気刺激(tACS)による脳機能の振動調節の介入を行った。 「今年度の研究成果」1) 吃音症においては、左右聴覚野の位相同期度がβ帯域において高まり、聴覚刺激に対する右聴覚野の刺激同期性が吃音症の重症度と関連することを報告した。2) 健常人において、痛みの共感の脳内機序を検討した。α/β帯域の神経振動が痛みの共感と関連し、γ帯域振動がその認知的側面に関わることを報告した。3) 健常人において聴覚時間縮小錯覚の脳内基盤を脳磁図で検討した。右の側頭頭頂部結合領域が時間の符号化を行い、右前頭葉下部が時間判断をしていることを解明した。4) 健常人において聴覚定常状態反応を記録し、時間周波数と音周波数に依存して、半球優位性が変わることを報告した。5) 他班とのコラボでは、B03班と「回転する蛇錯視時の脳磁図計測データ」について共同研究をさらに進めた。「隠れマルコフ」の論理を応用して、刺激に時間的に同期しない内因性振動を見える化する研究であり、H30年度以降も継続して研究する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
九大にあるMEGは、H27年度においてオーバーホール並びにシステムのアップグレードを行った。しかしながら、コンピュータ・システム内のボードをすべて交換しなかったため、経年劣化した分の交換が必要となった。そのため、当初計画していたプロジェクトの進行に少し遅れが生じ、研究費を繰り越しした。しかし、共同研究体制は十分に構築されており、研究論文も一流国際誌に掲載されたので、概ね順調に進展していると判断している。 今年度は、以下の4つの重要な知見が得られたので、ヒューマンネーチャーの解明のためにさらなる研究を継続する。1) 吃音症においては、左右聴覚野の位相同期度がβ帯域において高まり、聴覚刺激に対する右聴覚野の刺激同期性が吃音症の重症度と関連することを報告した。2) 健常人において、痛みの共感の脳内機序を検討した。α/β帯域の神経振動が痛みの共感と関連し、γ帯域振動がその認知的側面に関わることを報告した。3) 健常人において聴覚時間縮小錯覚の脳内基盤を脳磁図で検討した。右の側頭頭頂部結合領域が時間の符号化を行い、右前頭葉下部が時間判断をしていることを解明した。4) 健常人において聴覚定常状態反応を記録し、時間周波数と音周波数に依存して、半球優位性が変わることを報告した。 他班とのコラボでは、B03班と「回転する蛇錯視時の脳磁図計測データ」について共同研究を開始した。これは、刺激に時間的に同期しない内因性振動を見える化する研究である。脳の内因性揺らぎと視覚認知との関連は、神経科学の領域では、ホットな話題であるので、成果が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
実験は概ね順調に進行している。MEGのボードの問題はあるが、交換すれば問題なく稼働するので、研究の大きな支障とはならない。本プロジェクト研究を通じて、派生的に捉えられたいくつかの結果を基に、H29年度も実験を継続する。特に、安静時・課題負荷時の神経揺らぎの生理学的意義と磁気(TMS)・電気刺激(tACS)による脳機能の振動調節の介入に焦点を当てる。tACSでは刺激周波数依存性の運動野の可塑性誘導を見出した。脳の領域には固有のリズムがあるので、内因性のリズムと外的振動との因果関係を研究する。認知症、てんかん、自閉症など広域ネットワークの障害が予想される疾患を主な対象としながら、「ヒューマンネーチャーとは何か」という命題の本質を突き詰めて行く。脳機能の結合性をどのような指標でどう解析するかは未知の領域でもある。これらの点を踏まえて、共同研究者、連携協力者、大学院生と更なる連携を深めながら、研究を進めて行く。
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