研究実績の概要 |
・リズム生成を担うとされる遅延性K+イオンチャネルをもつニューロンの挙動は、MATモデルと呼ばれる簡略モデルにより記述可能であることを示した。さらにその簡略モデルを用いて、AHPチャンネルとMチャンネルがニューロンダイナミクスに与える影響について解析を行った。(Kobayashi, Kitano 2016) ・リズム活動を示す系の重要な特性として位相応答曲線があるが、従来法で計測した場合、事前に正しい等位相面を知ることは原理的に出来ないため、測定が正しく行われない問題があることを指摘した。その見過ごされた問題点を指摘し、従来の手法を複数周期に拡張することで正しく計測できることを理論と数値実験から示した。(Imai et al., 2017) ・リズム集団の引き込み転移は脳波のダイナミクスを解明するために重要であるが、従来の理論は個別の平均発火率(振動数)のばらつきを対称な分布に限定したものであった。神経系では一般にそれは成り立たず、非対称な分布の場合に理論解析を行い、新たな引き込み転移が出現する事を示した。(Terada et al., 2017) ・平均周波数が整数倍異なる2振動子集団のダイナミクス、特に、同期ダイナミクスを縮約理論を用いて詳細に調べた。脳波では、α波やβ波、γ波等の整数倍異なるリズム活動が同時に見られ、それらの同期・非同期の特性を理論的に調べることは重要であり、その参考になる結果が得られた。(Terada, Aoyagi, 2016) ・人の歩容遷移は運動制御に関わる脳の情報処理の典型例として重要である。位相応答関数をデータから推定した結果、理論モデルから予想される知見とコンシステントな結果が得られた。今後、歩行障害等の診断データとして活用する可能性もあり、ノイズの多いデータから計測に成功したこと自体が重要な成果である。(Funato et al., 2016)
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