研究領域 | 非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解 |
研究課題/領域番号 |
15H05877
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北野 勝則 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (90368001)
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研究分担者 |
北城 圭一 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 副チームリーダー (70302601)
青柳 富誌生 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90252486)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 位相ダイナミクス / 位相応答 / 脳波 |
研究実績の概要 |
・リズミックな活動を示す現象を理解するには、その背後にあるダイナミクスを数理的に記述することが重要である。脳波のような時系列データであれば、データから直接ダイナミクスを推定する手法が提案されているが、スパイク活動のような離散的なデータに対しては、適用可能か不明である。従来手法をスパイクデータに対して拡張し、数理モデルを用いたシミュレーションデータに適用して、推定可能かを検証した。その結果、提案する手法は、十分な量のデータがあれば、リズミックなスパイク活動の背後にあるダイナミクスの推定が可能であることが示された。 ・近年、頭皮脳波として観測される周期的な脳活動が、音声のエンコードや時間的な注意と言った機能を担っていると考えられている。また外部刺激を受けた時の脳波の状態により、神経活動の大きさが変化すると言われている。そこで、音声認識課題遂行中の脳波を測定し、音声聴取直前の脳波位相に依存して課題成績が変化することを確認した。この結果は、脳波として観測される周期的な脳活動の状態が、音声認識を行う上で重要であることを示している。また脳波と磁気共鳴機能画像法の同時計測を実施し、脳波と運動野の活動が関係することも示唆された。 ・脳内では周期的な神経活動があり脳波として観測することができる。この脳波は、他の脳波や外部刺激と同期することが知られている。脳波の同期現象には同一周波数のものだけでなく異なる周波数間の同期も報告されており、認知機能に対して重要な役割を担っているのではないかと考えられている。この複数周波数間の同期現象を対象に位相振動子モデルを用いたダイナミクスの推定手法を提案した。また脳波データに対して適用し、推定結果の妥当性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・シミュレーションデータや脳波データに対してモデルベース解析を適用し、その有用性を確認した。 ・A03班との共同研究において、人のECoG(皮質脳波)データに対し、モデルフリー解析を適用し、結果を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
1.脳波データに向けたモデルベース機能的結合推定法の開発:領域内のA03班において、てんかん患者に対する治療の過程で計測された皮質脳波(ECoG)データを解析することで、病変脳に おける脳活動ダイナミクスの解明を進める。脳波データのような生体ノイズなどの不確定要素を多く含む時系列データを解析するには、計測値そのものより、計測値の相対的関係を用いる方が有効であると考えらえる。このような観点に基づいた情報理論的解析法である、permutation entropy(順列エントロピー)、および、symbolic transfer entropy(シンボリック移動エントロピー)をECoGデータに適用する。てんかん発作期と発作間欠期におけるデータを上記解析法により特徴づけ、ECoG信号源ダイナミクスと信号間相互作用の特性を明らかにし、てんかん発作の予測可能性について研究を行う。また、これらの解析結果に基づいて、脳波信号ダイナミクスのモデル化について試みる。
2. 高次脳機能における機能的ネットワーク構造の推定・介入刺激実験とその解析手法の開発:健常な被験者に対する安静時、および、認知機能時のtESとTMSによる脳刺激時のEEGデータについて、permutation entropy、および、symbolic transfer entropyを適用し、脳領域間情報伝達過程について解析する 。
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