計画研究
以下のように、さまざまな局在多極子系が示す伝導電子との混成効果の研究を行った。まず、四極子近藤系PrT2Al20において異方的磁歪、熱膨張を確認し混成効果との関係が明らかになった。価数揺動系YbAlB4の圧力下の実験からYb系では最大の30 Kを超える磁気転移を見出した。(中辻)イジング強磁性超伝導体URhGeについて角度分解の磁化測定を行い、量子相転移近傍の相図のウィング構造を決定することに成功した。新規カイラル物質EuPtSiの極低温磁化測定から中間磁場相が存在することがわかり、MnSiにおけるスカーミオン相と類似の現象が示唆される。(榊原)低温・強磁場中174Yb放射光メスバウアー分光測定手法を立ち上げ、Yb4f電子状態を直接観測することに成功した。その結果、磁場誘起のYb4f電子状態の変化に対応したメスバウアー・スペクトルの変化を観測した。(小林)これまで全角運動量J=0、7/2のEu化合物において、これまでの常識を覆し、従来の希土類化合物を遥かに凌ぐ弾性異常を発見した。(中西)異常ホール効果を発現する反強磁性秩序が強磁性秩序を特徴づける磁化に類する巨視的秩序パラメータ(クラスター多極子モーメント)を持つこと示し、その発現機構を明らかにした。(鈴木)c-f混成の異なる四極子系である PrT2Al20 (T= Ti, V)の中性子散乱実験を行った。その結果、V系において極めて幅の広い非弾性散乱ピークが観測されたが、これは強い混成効果を示す重要な実験結果である。(佐藤)準周期系の超伝導を微視的に調べるため、ペンローズ格子上で定義された引力ハバード模型を調べた。ペンローズ格子は並進対称性がないため、波数で特徴づけられる通常のクーパー対が形成されない。ギャップ関数が引力の強弱でどのように構造を変化させるかを明らかにした。(有田)
2: おおむね順調に進展している
高磁場装置が導入されたことにより、四極子秩序による磁場誘起の量子臨界現象を磁歪により検出することに成功した。(中辻)磁場角度可変の磁化測定装置が順調に可動し、新しい実験成果が得られている。(榊原)国内外で初めて低温・磁場中174Yb放射光メスバウアー分光測定を可能し、高圧力下での測定も試み、2Kで 4GPa までのメスバウアー・スペクトル測定の可能性を確かめた。(小林)クラスター多極子の発見により、国内外での学術会議における発表を行い、成果をまとめた論文を出版している。また、同研究成果において提案した理論的枠組みを使った発展研究も進展している。(鈴木)当初の目標であるPrT2Al20(T=Ti, V)系の中性子非散乱実験をほぼ完了することができたため概ね順調に進展していると判断した。弾性散乱による秩序変数の決定は未完了であり今後の課題である。(佐藤)準周期系の超伝導の出発点となる解析が行われた。次年度以降、領域内の実験グループのデータと比較する上で重要な基礎となると考えられる。(有田)
多極子近藤系、価数揺動系の高磁場下での多角的測定により局在多極子の混成効果の研究を引き続き行う。(中辻)引き続き、URhGe、EuPtSiについて研究を行う。前者は一次転移の機構を多極子の観点から考察する。後者については、磁場の角度変化によりこの新奇秩序相をさらに詳しく調べる予定である。その他、PrTi2Al20系など多極子転移物質について、角度変化の磁化測定から新たな知見を得ることを計画している。(榊原)局在4f多極子間相互作用と伝導電子混成(近藤)効果との関係を、多重極限環境(低温・高磁場・高圧力)下174Yb放射光メスバウー分光法を用いて、超微細相互作用を通じた4f電子状態の直接観測により明らかにする。(小林)前年度導入されたヘリウム3冷凍機ならびに既存の希釈冷凍機を用いて、極低温磁場下での高感度超音波測定を4f^3系及び5d電子系で実施する。(中西)反強磁性の巨視的秩序パラメータに関する研究を進め、C01班との研究協力によって電気磁気効果などより一般の伝導現象の発現メカニズムの解明を目指した研究を実施する。(鈴木)磁場中中性子弾性散乱実験をさらに進めPrT2Al20(T = Ti, V) の秩序変数を決定する。さらに、他の班と共同で希土類重い電子フラストレート系の中性子散乱実験を行うことにより新奇磁性を開拓する。(佐藤)領域内の実験グループにおいて、準周期系の超伝導が実際に発見され、物理量の精密な測定がはじめられている。準周期系超伝導体特有の特異なスペクトルに起因する特異現象(比熱の温度依存性、トンネルスペクトルなど)の計算を進め、実験との対比を行う。(有田)
東北大学 多元物質科学研究所 スピン量子物性研究分野 佐藤卓研究室http://www2.tagen.tohoku.ac.jp/lab/sato_tj/
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (22件) (うち国際共著 1件、 査読あり 21件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 17件) 学会発表 (79件) (うち国際学会 7件、 招待講演 8件) 備考 (5件)
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