研究領域 | J-Physics:多極子伝導系の物理 |
研究課題/領域番号 |
15H05884
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 大 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30359541)
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研究分担者 |
石田 憲二 京都大学, 理学研究科, 教授 (90243196)
神戸 振作 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主席 (40224886)
井澤 公一 東京工業大学, 理学院, 教授 (90302637)
松田 達磨 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30370472)
柳瀬 陽一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70332575)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 強相関系 / 多極子 / 重い電子系 / 超伝導 / アクチノイド |
研究実績の概要 |
強磁性超伝導体URhGeにb軸方向に一軸圧力を加えることにより、リエントラント超伝導相が大きく低磁場にシフトし、低磁場超伝導相と一体となることがわかった。これは、スピン再配向磁場HRの低下と追随している。一軸圧力によって、強磁性ゆらぎがチューニングされ、これが超伝導を生み出していることがわかった。URhGe、UCoGeのシュブニコフ・ドハース効果、熱電能による量子振動測定により、強磁場中でのフェルミ面の不安定性を明らかにした。また、URu2Si2の純良単結晶を育成しシュブニコフ・ドハース効果によるg因子の異方性を詳細に調べた。NMRによる実験結果からは、UCoGeの自己誘起渦糸状態、UPd2Al3のスピン一重項状態とHc2近傍の異常な超伝導状態が明らかになった。またCeCoIn5系の人工超格子についても研究を行なった。URu2Si2の隠れた秩序の対称性および超伝導状態についてNMRから詳細な研究が行われた。極低温輸送現象測定によりUBe13-Thの非フェルミ液体的挙動、2段の超伝導転移、PrT2Zn20の電子状態や量子臨界挙動について明らかにした。BiS2系超伝導体の研究が進み、Uを含むBiS2系超伝導の発見、Eu系では巨大磁気抵抗などを見出した。理論としては、多極子の分類学が進み130以上の電磁応答が期待される候補物質が見つかった。超伝導ギャップの分類学的研究がUPt3、UBe13、PrOs4Sb12について研究が行われた。またUPt3、UCoGeにおいてはトポロジカル超伝導としての理論的研究が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように研究は順調に進んでおり、今後の発展が期待される。とくに強磁性超伝導体においては、一軸圧力がこれほどまでに劇的な超伝導相および強磁性ゆらぎの変化を生み出すとは当初は考えていなかった。予想以上の研究の進展があったと考えている。このような一軸圧力の実験は、今後、他の物質にも適用できるため、研究の新たな方向性を切り開くものである。また、スピン三重項超伝導体である強磁性超伝導体が、トポロジカル超伝導として理論的研究が進んだのも大きな成果である。多極子の物理とトポロジカル物質の物理との分野横断的な研究内容であり、今後の研究の発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
URhGe、UCoGeの純良単結晶を用いた一軸圧力実験をさらに進める。電気抵抗による相図の決定のみならず、中性子散乱を含めた包括的な研究を進める予定である。このため、国際共同研究をさらに加速させる予定である。UCoGeにおいては、一軸圧力に対する応答が異なることが期待されるので、強磁性量子臨界現象との関係も明らかにしたい。BiS2系については、さらに物質探索を進める予定である。UPd2Al3、UPt3、URhGeについては、強磁場中でのメタ磁性の振る舞いの研究を電気抵抗、NMRその他の実験によりさらに推し進めたい。さらに最近、開発に成功したFIBを用いた試料の微細加工技術と強磁場実験、あるいは電磁応答実験を組み合わせた研究を進めたい。
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