計画研究
180トン高圧合成装置などの特徴的な物質合成装置と、物質同定に必要なX線回折装置などの整備を行い、強相関多極子物質を開発する環境を整えた。以下に研究実績を記載する。【超伝導体】ハニカム構造を持つ超伝導体BaPtAs(転移温度3 K)を発見した。またSrPtAs(同2.4 K)の単結晶育成に成功した。トポロジカル結晶絶縁体SnTeにAgをドープすると超伝導(同2.4 K)が発現することを見出した。PdドープAuTe2において、構造相転移と強結合超伝導の競合関係を明らかにした。BiS2系超伝導体において化学圧力と超伝導の相関を明らかにした。またBiS2系の母物質が高い熱電変換特性を示すことを見出した。【1-2-20型化合物】強相関多極子のプロトタイプ化合物であるPrIr2Zn20において、Ga置換によって非フェルミ液体挙動を示す温度領域が高温側へ拡大することを明らかにした。Ga置換により四極子近藤格子が安定化したためと考えられる。また、Pr希薄系では不純物による四極子近藤効果の兆候を捉えた。【イリジウム酸化物】J=1/2 の金属状態を実現するために Sr2IrO4に対し、La置換、Cl置換、H置換による電子キャリアドーピングを行った。La置換系については角度分解光電子分光によるフェルミ面観測を実施した。【理論】パイライト型結晶構造のCoS2とCoSe2の電子構造とフェルミ面を計算して、カイラル立方晶ウルマナイト型のNiSbSやPdBiSeのフェルミ面と比較した。CoS2とNiSbSは同じ価電子数を持ち、前者は反転対称性があり、後者は反転対称性がないので、パリティ対称性の破れによるフェルミ面の分裂を見るには格好の例である。また、反転対称性のない正方晶TaPとNbPの電子構造と電場勾配を計算した。結果を実験結果と比較することで、高次電気多極子の影響を示唆する結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
研究計画は、当初実施計画に沿って推進した。BaPtAsやAgドープSnTeなどの新超伝導体を発見している。また理論的に、パリティ対称性の破れによるフェルミ面の分裂を観測するために格好の例を見出した。1月9日には「J-Physicsが目指す物質開発」についてのトピカル会議を開催し、研究経過の報告と、情報の共有を行った。研究設備の購入は、当初予定通りに行った。
D01班内の共同研究を通して、より大きな成果を得ることを目指す。そのためにトピカル会議を開催して、新物質開発についてのアイデアを共有し、共同研究を促進する。また、A01班、B01班、C01班との共同研究を進める。具体的には、単結晶化に成功したSrPtAsにおけるスピン軌道相互作用によって分裂したフェルミ面の観測をB01班と共同で進めるなどである。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (25件) (うち国際共著 5件、 査読あり 25件、 謝辞記載あり 7件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (53件) (うち国際学会 11件、 招待講演 14件) 備考 (1件)
Phys. Rev. B.
巻: 93 ページ: 140505(R)-1-5
10.1103/PhysRevB.93.140505
巻: 93 ページ: 134109-1-6
10.1103/PhysRevB.93.134109
Supercond. Sci. Technol.
巻: 29 ページ: 055006-1-6
10.1088/0953-2048/29/5/055006
Phys. Rev. B
巻: 93 ページ: 064504-1-6
10.1103/PhysRevB.93.064504
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 18931-1-7
10.1038/srep18931
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 85 ページ: 053702-1-5
10.7566/JPSJ.85.053702
J. Appl. Phys.
巻: 119 ページ: 155103-1-6
10.1063/1.4946836
Jpn. J. Appl. Phys.
巻: 55 ページ: 053101-1-6
10.7567/JJAP.55.053101
J. Phys.: Conf. Ser.
巻: 683 ページ: 012003-1-5
10.1088/1742-6596/683/1/012003
巻: 683 ページ: 012003-1-7
10.1088/1742-6596/683/1/012002
The Chemical Record
巻: 16 ページ: 633-651
10.1002/tcr.201500263
巻: 683 ページ: 012001-1-5
10.1088/1742-6596/683/1/012001
Inorg. Chem.
巻: 55 ページ: 3674-3679
10.1021/acs.inorgchem.6b00247
Solid State Communications
巻: 227 ページ: 19-22
10.1016/j.ssc.2015.11.016
Cogent Phys.
巻: 3 ページ: 1156281-1-14
10.1080/23311940.2016.1156281
巻: 93 ページ: 064105/1-6
10.1103/PhysRevB.93.064105
J. Phys.: Conf. Series
巻: 683 ページ: 012011/1-7
10.1088/1742-6596/683/1/012011
巻: 683 ページ: 012031/1-6
10.1088/1742-6596/683/1/012031
巻: 85 ページ: 043601-1-4
10.7566/JPSJ.85.043601
J. Phys. Soc. Jpn
巻: 85 ページ: 34718-1-4
10.7566/JPSJ.85.034718
巻: 6 ページ: 23424-1-7
10.1038/srep23424
Phys. Chem. Chem. Phys.
巻: 17 ページ: 22090-22096
10.1039/c5cp03750f
Sci. Rep.
巻: 5 ページ: 14968-1-8
10.1038/srep14968
Appl. Phys. Express
巻: 8 ページ: 111801-1-3
10.7567/APEX.8.111801
巻: 54 ページ: 10462-10467
10.1021/acs.inorgchem.5b01919
http://www.jphysics.jp