研究領域 | なぜ宇宙は加速するのか? - 徹底的究明と将来への挑戦 - |
研究課題/領域番号 |
15H05889
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 史宜 東北大学, 理学研究科, 教授 (60503878)
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研究分担者 |
樽家 篤史 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (40334239)
川崎 雅裕 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (50202031)
郡 和範 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50565819)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | ダークマター / ダークエネルギー / インフレーション |
研究実績の概要 |
高橋はインフラトンとダークマターをアクシオンで統一的に説明する模型を構築し,そのパラメター空間を詳細に調べることで将来の太陽アクシオン実験およびCMB観測で検証可能であることを示した,川崎は宇宙初期に原始ブラックホールを生成するインフレーション模型を構築し、この模型がLIGOで発見された重力波イベントと宇宙の暗黒物質の両方を説明することができることを示した。樽家は構造形成の非線形段階に現れるシェルクロッシングと呼ばれるコールドダークマター特有の現象をラグランジェ摂動論を用いて記述することに成功した。また、N体シミュレーションを用いてシェルクロッシング後に現れるコールドダークマターの位相空間構造を定量化することで、ハロー外縁部の構造が自己相似解でよく記述できることを見出した。郡は,IceCube実験が報告した100TeVから数PeVのエネルギーを持つ高エネルギーニュートリノが持つ複雑なスペクトルの特徴を崩壊するダークマターによってフィットするモデルを提案した。千葉は暗黒物質の正体に知見を得るために、銀河系周囲の暗黒物質構造を反映している矮小衛星銀河の探査を行い、幾つかの新しい銀河を発見した。また、その発見率が冷たい暗黒物質の予言と矛盾しないことが分かった。伊部は strong CP problem の解であると期待される Peccei-Quinn 機構に対する再考察行った。特に Peccei-Quinn 機構に重要な大域的対称性をゲージ対称性から導く簡潔な一般的処方箋を考案した。横崎はQCDアクシオンは強いCP問題の解の帰結として現れる新粒子である。高橋・横崎は大学院生の大道とともに、QCDアクシオンが隠れたゲージボソンと結合するとき、アクシオンと光子との結合が通常に比べて100倍程度大きくなり、将来実験で容易に観測出来ることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダークマターとインフレーションを統一的に記述し,かつ将来CMBやレーザー実験において検証可能なアクシオン模型を構築するなど,他計画研究班および公募研究との連携に繋がる研究成果をあげることができた.また特筆すべき成果として,矮小衛星銀河探索したところ新しい銀河を発見し,冷たいダークマターと無矛盾な結果を得ることができた.また構造形成の非線形段階に現れるシェルクロッシングと呼ばれるコールドダークマター特有の現象をラグランジェ摂動論を用いて記述することに成功した他,原始ブラックホールがダークマターとなるシナリオに関してその生成機構を詳細に調べたり,アクシオンダークマターの基礎となるPeccei-Quinn対称性に対する新しい理解を得るなど着実に成果を上げている.
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今後の研究の推進方策 |
川崎はバリオン等曲率揺らぎに関して、その生成メカニズムとそれが原始ブラックホールを生成する可能性や宇宙初期の軽元素合成に与える影響を調べる。樽家はコールドダークマター優勢宇宙における構造形成の精密理論構築に向け、新しい計算手法の開発を引き続き進める。特に、3次元重力系で起こるシェルクロッシング後の現象を解析的に記述する手法を模索するとともに、N体シミュレーションをもとにダークマターハローの位相空間構造を明らかにし、より精密なコールドダークマターの検証方法を探求する。郡はガンマ線の次世代実験であるCTA計画では、我々の銀河に付随するdwarf galaxyの内部で起こると期待されるダークマターの対消滅もしくは崩壊に起因するガンマ線の空間分布を検出することが期待されている。その観測と比べられる理論テンプレートの製作の準備を行う。伊部はゲージ対称性に基づく Peccei-Quinn 機構に関する発展として axion 暗黒物質や domain wall 問題、その他宇宙論との整合性を考察していくことを計画している。千葉は引き続き矮小銀河の探査を行って、その発見率の統計を高めるとともに、個々の矮小銀河の暗黒物質分布を求めるための観測とその解析を進める。横崎は超対称性を破る場のシフトに対して不変な理論は、超対称性理論に伴うCP問題を解決することが出来る。この理論において、超対称性を破る場は自然にQCDアクシオンを含む。この理論に基づき、アクシオンや超対称性粒子に対する宇宙論的・実験的制限を明らかにする。高橋は研究の総括をするとともに,ダークマターの様々な模型構築および制限を導くほか,加速宇宙の謎の解明に向けて他計画研究班との研究協力に尽力する,
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