研究領域 | なぜ宇宙は加速するのか? - 徹底的究明と将来への挑戦 - |
研究課題/領域番号 |
15H05890
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉山 直 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (70222057)
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研究分担者 |
野尻 伸一 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (00432229)
市來 淨與 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (10534480)
辻川 信二 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 教授 (30318802)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙論 / ダークエネルギー / ダークマター / 宇宙マイクロ波背景放射 / 宇宙大規模構造 / 修正重力理論 |
研究実績の概要 |
現在の宇宙の加速膨張を説明するために様々なモデルを考え、その観測による検証について考察した。 まず、ダークエネルギーが、スカラー場の真空エネルギーによって担われている可能性について、通常の場合に行なっている空間の曲率を平坦に仮定するという制限を設けず、一般の曲率の場合について宇宙マイクロ波背景放射の温度ゆらぎの最新観測であるPLANCK衛星の結果を用いて、制限を与える一連の研究を行った。 次に、ダークエネルギーが流体のようなダイナミカルな性質を持つ場合について検討を行った。この場合には、宇宙の大規模構造を反映してそのエネルギー密度に空間的な揺らぎを伴うことが予想される。そこでダークエネルギーの密度揺らぎがボイドの数分布、およびサイズ分布に及ぼす影響を解析的に評価した。 さらに、ダークエネルギーの代替となる修正重力理論についても検討を進めた。新たに考えたモデルとしては、 F(G) 重力模型にラグランジェ乗数場を導入したもの、スカラー場の高階微分を持つ模型とF(R)重力理論を合わせた模型などである。また、展開半径というものを拡張重力理論で求め、模型に対する観測的な制限を求めた。更に、ツァリス統計と拡張重力理論の関係を考察し、その統計性に基づく模型の構成、宇宙項の量子的な問題を解決するために位相的場の理論の模型を考察したほか、磁場中や粘性流体中での重力波の伝播を研究し、宇宙論的な制限について考察した。中性子星合体からの重力波の伝搬速度が光速と矛盾がない、という観測事実から、それと矛盾しないスカラーテンソル理論に基づくダークエネルギーモデルを新たに構築し、その観測的な兆候を明らかにする研究も進めた。また、スカラーベクトルテンソル理論に基づく宇宙論、特に線形密度ゆらぎの従う基礎方程式と安定性の条件を一般的に導出し、その結果をダークエネルギーの物理に応用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、順調にダークエネルギーに関係する研究成果をあげることに成功してきている。今年度も、様々なモデルを提案、それらを観測的に制限することに成功してきた。 査読付き国際学術誌に22本論文を発表し、またそれらの多くが国際共同研究であることなど、研究成果という点を評価軸とすれば、極めて順調に推移してきていると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2019年度は、これまでの研究をさらに進め、またまとめとなる国際会議を開催することを検討している。 具体的な研究内容として、まず、近年提案されたバリオン音響振動の新しい観測量が修正重力モデルや時間変化するダークエネルギーモデルにおいて、どれほど安定した観測量として用いることができるかについて精査する。 次に、拡張重力理論について、拡張重力に現れるスカラー粒子がダークマターとなる可能性からの検証、重力波の伝播の違いによる検証、宇宙の大規模構造形成による検証を行う。ダークマターについてはF(R)重力以外の拡張重力理論についても考察を行う。重力波の伝播についてはこれまでにスカラー・テンソル理論、F(R)重力理論、粘性流体理論について調べてきたが、他の様々な模型における伝播についても明らかにする。宇宙の大規模構造の非摂動論的研究についても繰り込み群的な手法を取り入れる。これらの知見から、アインシュタイン重力理論の背後にある量子論との整合性を持つ重力理論についての手掛かりを得る。 さらに、スカラーベクトルテンソル理論のダークエネルギーへの応用に関する研究、特に理論の観測的な兆候について精査する。そこでは、理論的に有効な模型の絞り込みを行い、さらに今後得られる重力波の最新の観測データと、宇宙背景放射、大規模構造、重力レンズ、さらに超新星などのデータを用いた統合的な解析を行い、モデルの選別を行っていく。それに加えて、これら宇宙の加速膨張のモデルをブラックホールや中性子星のような強重力天体に適用し、理論の兆候を重力波の観測から探る可能性について研究していく。
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